長編 書き場

□約束
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次の日、いつも花畑に行った後は外に出ないようにしていたが、昨日出会ったヒソカという少年のことが気になり花畑行けばまた会えないかと心の中で期待していたカメリアは今日も花畑に出向いた。

「いない.....」

期待していた少年は居なく、いつも通り誰もいなかった。

「折角来たしビブリオさんのところでも寄ろうかな」

ついでとばかりに集落の方に足を運ぶとそこに念能力者はビブリオさんしか居ないのにも関わらずオーラを纏った人物がいることに気づいた。

「(誰.....)」

ヒソカとは違って殺気や嫌な雰囲気はないが初対面には必ず警戒するカメリアは木の影に隠れて相手の姿を確認した。

「女の子.....?」

その容姿は金髪ツインテールの少女、旅人だろうか見慣れない服装で人目のつかないところで座り込んでいた。

「“魔法美容師(まじかるエステ)”」
「!」

少女の念能力だろうか少女に似た大人びた女性が現れとても柔らかいオーラで少女を癒していた。

「隠れてないででてきたらどう?」
「っ!」

少女の能力に見惚れているとこちらに振り向くことなく指摘され、隠れていたことに気づかれていた。バレてしまっては隠れていても意味がないので即座に少女の前に姿を表す。

「あら、驚いたわさ」
「??」
「結構なやり手だと思っていたけどまさか子供だったとわね、しかも女の子」

カメリアの姿を見るなりよくわからない独り言を呟き始めた。遠目から見ると普通の少女のように見えるが近くで見ると見た目は変わらず少女なのにどこか貫禄のある不思議な感じがした。

「あんた名前は?」
「へっ....カメリア.....です?」
「そうカメリアね!私はビスケット=クルーガー。ビスケって呼んでね」
「は、はい....」

とても馴れ馴れしい話し方にカメリアは戸惑いながら流されるように言葉を返した。

「ビスケさんの”魔法美容師(まじかるエステ)”素敵な能力ですね」
「あら、ありがとう。それにしても私、色々な所を旅してきたのだけれど貴方程の若い能力者は初めて見たわ」
「あ、ありがとうございます」
「それじゃあ私は次の街に行くわさ、またどこかで会えるといいわね」
「え、あ、はい」

ビスケはほぼ一方的に会話を進めるとあっという間に集落から旅立ってしまった。風のような人物にカメリアは呆気に取られたままだった。
ビスケが見えなくなると今度は本来の目的であった人物がこの集落に現れた。

「あ、ヒソカ」
「やぁ♦勝負させてくれないかい?♠」

ヒラヒラと手を振りながら現れた彼は出会い頭に決闘を申し込んできた。昨日適当な別れ方をしたにも関わらずまた会えたことが嬉しかったカメリアはなんの躊躇いもなくヒソカの勝負を受けいれた。集落ではまずかったので花畑に移動し花が咲いてない場所である程度力を抑えて戦ったがヒソカはまだ念に慣れていないようで余裕で勝てた。

「強いね♠」
「ありがとう」

昨日とは違って殺気もなく友人と手合わせしてるようでとても楽しかった。勝負が終わると並んで寝転んで短い会話をする。

「また勝負してくれる?♦」
「もちろん」
「ここに来ればいる?♠」
「日によるけどいるよ」
「わかった♦」

淡々とした会話だったがお互い満足した様子だった。

ーーーそれから毎日ではないが花畑に向かう頻度は更に増えた。目的はもちろんヒソカだ。
マチに続く歳の近い友達ができたようで会えるのがとても嬉しかった。やってることは必ず手合わせであったがそれでもカメリアはとても満足していた。
ヒソカの方がどう思ってるかわからないが自分を必要としてくれてる気がして勝手な解釈ではあるがそれでも嬉しかったのだ。

手合わせするたびにヒソカは強くなっているのをひしひしと感じ、その度にカメリアは少しずつ焦りを感じていた。今はまだ負けることはないが、このままずっと手合わせを続けていればいつかヒソカに追い越されると感じていた。
ヒソカが必要としているのはきっと自分よりも強い相手。もし私が負ければヒソカは離れていくのではないかと不安に思っていた。
そんなカメリアの表情は日に日に暗くなってることにヒソカも気付いて、1ヶ月程が経った時にヒソカの方から気にかけてきた。

「どうしたんだい?♦」
「えっ」
「暗い顔してるから♣」

カメリアはずっと不安に感じていたことが顔に出ていたのに気付いてなくヒソカに指摘されたことに吃驚したが、この際に思っていることを聞いてみることにする。

「ヒソカは強い人にしか興味ないの?」
「うーん♠そうかもね❤」
「じゃあ私がヒソカに負けちゃったらもうどっか行っちゃうの?」
「.....そう...かもね♠」
「そっか....」

思った通りではあったがはっきり言われるとやっぱり辛かった。たった1ヶ月しか一緒にいなかったのにヒソカと離れることを考えると胸が苦しくなる。感じたことのない感情にモヤモヤしてカメリアはどうにかヒソカを引き止める為に咄嗟に思いついたことを後先も考えず口にした。

「ヒソカ、私と決闘して!!
「決闘?♦」
「私が勝ったらヒソカの旅に連れて行って!」
「えっ?♠」

ヒソカがカメリアの前で初めて驚いた顔をして一瞬固まり、我に帰ると少し悩んだ後いつもの微笑みを見せる。

「いいよ♦1週間後でいい?♣」

唐突の提案を受け入れてくれたことにカメリアはパァと満面の笑みを浮かべて喜んだ。

「ほ、ほんとに?!うん!いいよ!ありがとう!!ヒソカに負けないように修行する!」
「明日から1週間手合わせはなしだね♠」
「わかった!じゃあ1週間後の今の時間にここで待ってるよ!」
「わかったよ♣」

そしてカメリアはとても嬉しそうにその日は帰っていた。








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