長編 書き場
□喧嘩
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ヒソカと1週間後に決闘をすることになったカメリアはその日流星街に戻るとたまたまマチと遭遇した。
「あ、カメリア!....どうしたの?すっごく嬉しそうだけど」
いつもに増して嬉しそうな顔をしていたものだから不思議に思ったのであろう。
「えへへ...実はね!」
名前は出していないがマチには歳の近い念を使える男の子と知り合い、たまに手合わせをしていることは話していた。
そして先程あったことをカメリアは嬉しそうにマチに伝えるとマチは目を見開いた。
「え....それって....もしカメリアが決闘に勝ったら流星街から出て行くってこと....?」
「えっ....?」
決闘で勝てばヒソカについていく。そうすると流星街から出て行くことになるのは当然だがカメリアはそのことをまったく考えていなかった。
そのことに言われて初めて気づいたときは遅く、マチの表情が一気に暗くなる。
「私と離れ離れになるのもなんともないんだ....カメリア最近変わったよね。知らない間に文字も読めるようになって、それ以来とても明るくなったし、知識も増えて最近じゃどんどん強くなって.....昔に比べてあんまり一緒にいることも減ったよね....」
「っ」
間違いなかった、ビブリオさんに出会ってヒソカに出会うことによってマチと一緒に過ごす時間は確実に減っていた。それでもカメリアはマチと過ごした時間はかけがえのないもので一緒にいるのが当たり前だったから離れ離れになるなんてまったく考えていなかった。そんなカメリアの考えと行動がマチを少しずつ不安にさせていたのだった。
「それで....私よりも会ったばかりの男の子を選ぶんだね...」
「そんなっちが.....」
「カメリアがこんな風になるなら花畑を教えるんじゃなかった!!!!!」
「マチ!!!」
今までカメリアの前で涙を流したことのなかったマチが目尻に涙を浮かべ感情的に言葉を発して走り去るのをカメリアはただ驚き戸惑うことしか出来なかった。
「マチ.......」
今まで見たことのない表情と言動にカメリアはしばらくその場で頭がぐるぐるしていた。
必死に頭を働かせ自分の中で今までの出来事を振り返り整理をするとカメリアは決心して両頬を自分でパンッと叩いて気を引き締めた。
流星街中を探し回ったがマチが見当たらなかった。流星街にもし居ないのであれば心当たりはあと一つしかない。花畑だ。早速花畑に向かうと横になっている少女がいた。寝ているのだろうか?
「マチ......?」
カメリアが横になっている少女に近づいてマチだと確信したがマチは肩で息をしていた。
「えっ?!」
頬を赤く染め苦しそうにしているマチの額に手を当てるとかなりの高熱のようだった。どこか他にも異常がないかよく見てみると身体中擦り傷があった。全然気づかなかった。最近とくに侵入者がいたわけでもないのにどうしてこんなに傷ついてるのかわからなかったが、今はそれよりも苦しんでいるマチを救う方法を考える。
「あ.......」
ふと1ヶ月程前に出会った念を使える少女のことを思い出した。
「確か....ビスケット=クルーガー... ”魔法美容師(まじかるエステ)”」
カメリアはビスケが森の中で使用していた”魔法美容師(まじかるエステ)”を頭で思い出しながら使用者名、能力名を囁くと桃色のロングヘアーの女の子が具現化され、不思議なオーラでマチの身体を癒し始めた。
「......っカメリア.....?」
マチの表情が和らいだのを見て胸を撫で下ろす。
「マチ、大丈夫?」
「う、うん....ありがとう....今の”盗み喰い(アビリティハンター)”よね?」
「うん、先月この能力を使ってる人を見かけてね、名前も教えてもらえたし便利な能力だと思って覚えてたの」
「そうなんだ」
“盗み喰い(アビリティハンター)”についてはマチには教えていたので能力の発動条件や制約についても知っていた。
しかしカメリアの返答を聞いてなぜかマチはまた表情を暗くした。
「どんなに頑張ってもカメリアには追いつけないのかな.....」
「えっ?」
「さっきは酷い事言ってごめんね。私、カメリアが成長していってるのを見てどんどん置いていかれてるんじゃないかって不安になって....ずっと特訓していたんだけどどうしてもカメリアには届かなくて焦っていたの」
「じゃあさっきの熱といいその傷は.....」
「自分の身体の限界さえわからないなんて私ってほんと馬鹿だよね」
「.......」
あんなにマチを取り乱させ、熱を出したのも、傷をつけたのも、こんなに辛い思いをさせたのも全て自分のせいだというのに今までずっと気づかなかった。そんな自分自身に嫌悪感を抱いた。
「マチ!!!ほんとにごめんね.....私のせいでこんなに辛い思いさせて....!!」
「カメリアのせいじゃないよ」
「あのね!私、決闘で勝ったとしてもこの街をでないよ!」
「え?」
突然の宣言にマチは目を丸くした。
「やっぱりマチと離れたくない!だからね、条件を変えてもらうようにお願いする!」
「どうするの?」
「勝ったら友達になってもらう!そして、マチともお友達になってもらう!」
「なにそれ、あんた達友達じゃないの?」
クスッと笑い出したマチを見てカメリアもえへへ...と笑った。
「だから決闘まで稽古の相手になってよ!」
「しょうがないね、手伝ってあげるよ!」
いつもの調子に戻ると2人はとても楽しそうに笑い合った。