長編 書き場

□懸念
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人質の交換場所に向かう飛行船が近づいてくるとその側に誰かの姿が見えた。


「ヒソカ......!!」

旅団全員が揃っていないとクロロが死ぬ約束になっていたためパクノダはとても焦った様子だった。

「ヒソカさん!いきなりイルミと代わらないでくださいよ!気まずかったんですからね!!」
「えっ?!兄貴がいるのか?!」

イルミという言葉にキルアが反応するがカメリアはそれに反応する余裕がなかった。

「ごめんごめん♣君がこうやって交換に持ちかけられることは予想してたから僕だけで抜けてきちゃった❤」

クラピカと繋いだ携帯を耳に当てながらヒソカがカメリアたちに近付く。

『なにを企んでる....』
「僕も飛行船に乗せてくれ❤断ったらこの場でゴンとキルア殺しちゃうかな?❤」
『貴様......』
「ヒソカさん....」

先程のフィンクスとは違い、殺すとはいいつつも殺気を全く感じなかったカメリアはすぐに嘘だと気づき身構えることはなかった。

「団長と闘りたい、それだけなんだ❤」
「!」

ここでカメリアは漸くヒソカの目的がクロロと闘うことだと知った。
クラピカは承諾し、ヒソカもカメリアたちと一緒に飛行船に乗りこんだ。

「なぁ、カメリア。俺らと離れてる間に何があったんだ?まるで別人に感じるんだけど…」
「さっき旅団の人に襲われた時にみた能力は隠してたの?天空闘技場じゃ見なかった!」

移動までの間にキルアとゴンから質問責めにあい、今まで記憶喪失だったこと、ヒソカとは昔から面識があったこと、旅団のマチと親友だったこと、クロロとの知り合いになった経路を丁寧に話していった。

「まじかよ…色々偶然が重なりすぎてなんか信じられねぇけど…」
「それは私自身も驚いてるよ…」

ハンター試験で一緒になったヒソカとは実は幼いころから知り合いで、たまたま図書館で出会い会話をする仲になったクロロが親友であるマチの所属する盗賊団のリーダーで…
偶然すぎる繋がりにキルアとゴンは信じられない気持ちだが、カメリア自身も戸惑っていた。

「それにしてもカメリアがヒソカと幼馴染ってなんだか変な感じだね」
「確かにな、旅団の1人と友達ってことはもしかしてカメリアは悪いやつだったりして」
「えっ?!マチが幻影旅団に入ってるのは私の記憶がない間であって…!」

唐突にキルアに疑われ始めたと思い必死に弁解をしようとするとキルアが冗談だとクスクス笑った。
飛行船に乗ってからずっと黙ったままのヒソカの方に目を配ると先程の言葉を思い出した。

「ヒソカさん、本当にクロロさんと戦うんですか?」
「そうだよ❤僕はこの時のために旅団に入ったからね♦」

その言葉にパクノダがヒソカをキッと睨むとヒソカはニッコリとだけしてトランプで遊び始める。

「それは、どちらかが死ぬまでですか?」
「「「!」」」

カメリアの発言に飛行船にいたみんなが驚くがヒソカの表情は一歳変わることなくトランプ遊びを続けていた。
カメリアの問いに答えることはなく,目的地に着くまで飛行船の中は沈黙が支配した。

それからまもなくどこかの断崖絶壁の山頂に飛行船は着陸すると、外に出るように促される。
正面の離れたところにはもう一機飛行船が止まっており、小さくクラピカとレオリオとみたことのない小さい人、そしてクロロが立っていた。
パクノダとクラピカが電話で人質交換の話をし、クラピカの合図でカメリアたちは前に歩を進めた。

「…」

後ろでソワソワしてるヒソカを尻目にカメリアはクラピカたちのところまで歩き終わると口を開いた。

「ごめん、私は置いて飛行船を出して」
「えっ?」

その場にいた全員が驚いた顔でカメリアをみた。

「お前、何言ってるんだ!せっかく俺たちが助けてやったのによぉ!」

何を考えてるんだとばかりにレオリオは大声を出し、他のみんなも目を見開いたままだった。

「あ、帰る方法なら大丈夫!ちゃんと用意してるからさ!」
「わかった」
「「「クラピカ?!」」」」

クラピカは一度驚きはしたもののあっさりと承諾する。
クロロは念能力が使えない、そしてヒソカと協力関係を結んだときにカメリアに執着しているところを感じ、少なくとも殺されることはないだろうと思ったのだろう。

「ありがとう、あ、そうだ!今度こそ連絡交換しよ?」
「そうだよ!俺たちカメリアの連絡先知らなかったんだよね…!」

忘れていた連絡先交換をその場で済ませて、後で連絡すると伝えるとカメリア以外は飛行船に乗り込んでいった。

「はぁ……」

どうして残ると言い出してしまったのだろうかとため息をついた。
ヒソカはおそらくどちらかが死ぬまで戦うだろう。
それを止めたいのか、自分が止めることはできるのだろうか。
いや、そもそもどうして止めようと思ったのだろう。
ヒソカが死んでも、クロロが死んでも後味が悪いから?だったらその場にいなければいいだけなのに。
記憶を取り戻したことによってなのかカメリア自身でも感情がよくわからなくなっていた。







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