長編 書き場
□電話
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キルアとの電話を終えてスマホの画面を見るとヒソカからメールが来ていたことに気づいた。
「あれ、ヒソカさんから…」
『そろそろ終わったかい?♦』
どうやら連絡の催促メールのようだ。
「そういえばヒソカさんにも連絡するって言ってたんだっけ」
催促メールに応えるためにヒソカに電話を掛けようとするといきなり着信画面に変わった。
「えっ?」
着信画面は電話番号が表示されており自分のスマホには登録していない番号からだった。心当たりもなくとりあえずその電話に出てみる。
「はい、もしもし」
「俺だ」
巷で噂のオレオレ詐欺ってやつか?と突っ込みたくなったがその声に聞き覚えがあった。
「え?クロロさん…?」
「ああ」
「なんで私の番号を…」
「知り合いに依頼したらすでに知っていたみたいでね」
「依頼…って…」
電話越しに話すクロロの声色は明るい青年のクロロではなく旅団としてのクロロの方だった。
クロロの言う依頼相手はおそらくイルミのことだろうと察したが口に出すのはやめた。
「それで、わざわざ電話をかけてきてまで私に何の用ですか?」
「そう警戒するな。今は何もしない」
「今はって…」
そもそもクロロのことは警戒すらしていなかったので、いつか何かをされることを知り逆に警戒することになった。
「ヒソカのことが好きなのか?」
「はい????」
予想もしていなかった問いかけにカメリアの頭いっぱいに疑問符が浮かんだ。
「あの時残ったのはヒソカを心配しての行動だろう?」
「あれは…」
人質交換後に飛行船に乗らず残った行動をヒソカの身を案じての行動だとクロロは思っているようだ。
「確かにヒソカさんの心配はしましたけど…クロロさんが死ぬのも嫌なのでどっちの心配もしてましたよ…なのでどちらが好きとかではなくどちらも好きですよ」
恋愛感情というものをよく理解できないカメリアにはクロロの言う“好き”とは違う意味合いで受け取った。
「それは期待してもいいのか?」
「…何をですか?」
クロロの言う“好き“とカメリアの言う“好き”の価値観が違うせいで話が噛み合わない。
カメリアが惚けてるように感じたクロロはフッ…と笑うと本来の目的の話題に入った。
「ヒソカに除念師を探す依頼をした」
「えっ?」
「俺が念能力を取り戻した際の対価は決闘だ」
「!?」
電話越しからもカメリアの焦りを感じたクロロは面白そうに問いかける。
「決闘を止めたいなら4日後,俺のところに来い場所はメールする」
「えっ?!ちょっ…」
要件だけを伝えるとクロロは電話を切った。
呆気にとられて切られた電話を凝視する。ヒソカがクロロとの決闘を諦めていなかったこと,クロロが念能力を取り戻す為に行動を起こしていた。
電話を切られてから直ぐクロロからメールが届き,内容を確認すると今クロロが身を潜めているらしい住所が記載されていた。
電話番号だけでなくメールも聞いていたのかということは気にしないことにしよう。
「4日後って…たった今キルア達と約束した日じゃん….」
うーんと頭を抱えて悩むと,決心を決めたカメリアはキルアに謝罪と断りのメールを入れヒソカに電話をかけるとワンコールで繋がった。
「やぁ♦︎」
「さっきクロロさんから電話が来ました」
「……へぇ♠︎」
出た時の明るい声色から一変してかなりドスの効いた返事が返ってくる。
「先に言っておくが,ボクはやめるつもりはないよ♦︎」
カメリアが決闘をやめてほしいと言うことはわかっていたかの様に先に断りを入れられる。
もちろんカメリアも言ったところでやめてもらえるとは思っていなかった。
「そう言われるとは思ってました….」
「全く,カメリアにわざわざ言うなんてクロロも人が悪いね♣︎それで?他にも何か言われたんだろう?♦︎」
「えっと…..ヒソカさんのことが好きなのか?と言われました」
「………………….♦︎」
思っていた返答と違ったのかヒソカは黙り込んでしまった。
「他は?♠︎」
クロロにされた質問に対する答えは敢えて聞かず、話題を変えたかったのか、気まずそうに呟く。
「他は特に…..」
「そう….♣︎」
どうせ止めろと言われることはわかっていたので,敢えて4日後にクロロに呼ばれていることは黙っておいた。
その後少しの間お互い無言でいると、ヒソカはこれからやることがあるからとだけ言い電話を切られてしまった。
「……動揺してるヒソカさん久しぶりだったな」
なんともいえない気持ちになったカメリアは4日後まで暇になってしまったので、キルア達に直接会って謝罪しようと思い歩き出した。
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「クロロとの決闘はどうしても避けれないんだよ…カメリア♠︎」
切った電話を見ながらぽつりとヒソカは呟いた。