長編 書き場

□転移
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「ほんとにゲームの中に入ったんだ…」

ゲームの中に入るということに疑心暗鬼だったカメリアだが、クロロと一緒にいた部屋から一変、機械的な閉鎖空間に立たされたことで認めざるを得なかった。
目の前にある扉を開け続く道を進んでいくと少し広い空間にカプセルのようなものに乗った女の子が宙に浮いていた。

「女の子…..?」
「グリードアイランドへようこそ。名前を入力してください」
「おお….ゲームっぽい…..!」

目の前にホログラムのようなものが現れ、名前を入力する画面が映し出された。特に偽名を使う必要もなかったのでそのまま“カメリア”と入力する。

「カメリア様ですね。ゲームの説明を聞きますか?」
「お願いします」

案内人であろう女の子は淡々とゲームの説明を始めた。
グリードアイランドで使える魔法は「ブック」「ゲイン」のみであることからあまり複雑じゃなくて助かったと思ったのも束の間、カードの種類や扱いの説明で頭がパンクしそうになる。
ゲームをクリアするつもりはなかったのでクリア条件に関しては軽く聞き流し、ゲームの中で生き残る為カードの特性だけはしっかり把握しようと頭に叩き込んだ。

「説明は以上です。今までの説明はあくまで最低限ですので、詳しい情報はゲームを進めながら御自分で入手してください」
「こ、これで最低限なんだ…」

既に理解が追いつくことで精一杯なカメリアは説明されたことが最低限と聞き、ヒソカを見つける前にゲームの中で生きていけるか不安になっていた。

「では、そちらの階段からどうぞ」

女の子が手を向けた方に視線を送ると上につながる階段があった。
一段ずつ段差を昇る度、緊張から鼓動がどんどん早くなる。
グリードアイランドとは一体どんな場所でどんなゲームなのだろうか。
階段をのぼりきり、いよいよゲームがスタートする。

「草原….?」

まず最初に視界に飛び込んできたのは地平線が見えるほど辺り一面に広がる草原だった。
ハンター専用のゲームということもあり、スタートから殺伐とした雰囲気を想像していたカメリアは空気の澄んだ自然の景色に少し気が緩んだ。

「!」

突如背後に気配を感じたカメリアは振り返ると同時に身構えるが、相手が視界に入った瞬間スッと気が緩んだ。

「ヒ、ヒソカさん…..?」
「どうせ、ボクを追いかけてくるだろうと思ってたよ♦︎」

目の前に現れたのは目的の相手だった。
ヤレヤレと呆れたようにするヒソカだが、満更でもないような感じでもあった。

「止めようとしても無駄とは言ってましたけど、追いかけられるのは大丈夫なんですね?」
「♠︎」
「私が来るとわかっててわざわざスタート地点で待っててくれるなんてヒソカさんってやっぱりなんだかんだ優しいんですね」
「……..♣︎」

痛いところを突かれてしまったヒソカは黙り込んでしまった。いつもはやられてばかりだったので、いい気になったカメリアはさらにちょっかいをかけようとする。

「もしかしてヒソカさん実は…んぎゅぅむっっ!!!!」

言葉を遮るようにヒソカは大きな手でカメリアの口元から頬にかけて鷲掴みし、顔を寄せてきた。

「カメリア、後で覚えておくんだよ?❤︎」
「ゴ、ゴベンバザイ….(ごめんなさい)」

表情こそはいつもの笑顔ではあるもののかなりの殺気が込められており恐ろしくなったカメリアは半泣きで謝った。
だが正直、G・Iのことを全くわからないので、ヒソカを見つけるまでこの世界で生きていけるか不安に思っていたのでスタート地点でヒソカがいてくれたことはカメリアにとっては喜ばしい限りであった。

「ところでヒソカさんはこのゲームはプレイしたことがあるんですよね?」
「ないよ♠︎」
「へっ?」

サラッと否定され、カメリアはキョトンとしてしまう。

「そもそもボクはクロロの依頼でこのゲームの中に入っただけでゲーム自体に興味はないよ♣︎」
「あ、そうなんですね…ハンター専用のゲームなのでてっきり興味があると思ってました…ん….?ってことは…..」
「?♦︎」
「あの….ヒソカさん….ゲームのルールとかって….」
「さぁ?❤︎」
「Oh….」

ゲームのルールを理解していなければ、いくら戦闘力があろうと熟知したプレイヤーと対峙した際、こちらが不利になることは容易に考えられる。
以前の力を取り戻しつつあるが、未だまともな戦闘になったことはなくハンターしかいないG•Iのプレイヤーとの実力差が未知数であることにずっと不安を抱いていた。
そんなことを1人でモヤモヤと考えているカメリアを見てヒソカはポンと頭に優しく手を乗せる。

「心配しなくても君は十分強いよ♠︎」
「ヒソカさん……」

優しく微笑むヒソカにカメリアはまたキョトンとする。

「なんだか….ヒソカさんが優しいとちょっとくすぐったいですね」
「じゃあ置いていくね♣︎」
「ごめんなさい、置いてかないで!!待って!!!」

スッと真顔になり、足早に草原を歩き出したヒソカの後をカメリアは慌てて追いかけた。







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