長編 書き場

□洗礼
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「気づいてるかい?♦︎」
「はい、でも誰1人襲ってこないですね」

草原をずっと歩いてるうちに見晴らしのよかった景色から木々が群がる景色に移り変わっていき視界が悪くなってきた。
そこから少しすると視線をいくつも感じるようになったが、いつまで経っても姿を表すことはなく、後をつけられては程無くして去っていくもの、新たにつけてくる気配も感じたが、誰1人として目の前に現れるものはいなかった。

「隙でも伺ってるんですかね」
「そうかもしれないね♦︎でも一向に襲ってこないってことは?♣︎」
「私たちの方が格上とわかっている」
「そういうこと❤︎」

相手はもちろんハンターだ、見た目だけで敵対してくるものはおらず、相手との力量差をしっかり判断できる者たちのみのようだ。
数時間は経ったがいまだに目の前に立ちはだかるものがいないことを考えるとプレイヤーの中ではそこそこ腕は立つことを理解した。併せて、ゲームのルールを加味したとして熟知したプレイヤーがかなり優位に立てるものでもないようにも感じた。

「カメリアの思い過ごしのようでよかったね♦︎」
「まぁ、確かにそうかもしれないですけど、警戒するに越したことはないと思うので…」
「あ、そうだ♠︎」
「?」

唐突に何かを閃いたヒソカは足を止めにっこりと微笑みかけた。もちろん嫌な予感しかしないカメリアは引き攣った表情でたじろぐ。

「変なこと言わないでくださいよ?」
「ボク達2人でいるから相手もきっと襲ってこないんだよ♦︎だからボクは気配を経って見えない位置にいるからカメリア、ちょっとそこで誰かが襲ってくるまで立ってて❤︎」
「はい??????」

どうしてわざわざ相手に隙を作って奇襲をかけられる必要があるのだろうか。ヒソカの訳のわからない提案にカメリアは頭を悩ませたが、そもそもこの人に深い訳があるはずがないが、一応問いかけてみる。

「なんでですか?」
「だって歩いてるだけってつまらないじゃん♦︎それに、カメリアの実力全然見れてないからね♣︎」
「どうしてわざわざそんな….ってあっ?!」
「じゃあね〜❤︎」

カメリアの意見も聞かずヒソカはそそくさとその場を離れてしまい、静止の手を差し伸ばしたがそれも虚しく取り残されてしまった。
はぁ…と大きくため息をつくと、しょうがなしに言われた通り誰かが目の前に現れるまで近場の岩に腰掛けて待つことにした。

「大体ヒソカさんがいなくなったところで現れるなら、それって他のハンターはヒソカさんが怖くて近づけなかったか、私は舐められてるってことになるじゃん。」

不貞腐れた様子で膝の上で頬杖をついていると、早速目の前に人が2人現れる。
2人とも宙に浮かせた本を開いており、明らかに戦闘体制をとっていたが、カメリアにとって今はそんなことはどうでもよかった。

「よぉ姉ちゃん、やーっとあの奇妙な奴と離れてくれたな」
「あいつ君が悪いよなぁほんと、さてこれでようやく…」
「あ“ーー!!!もうムカつくーー!!!!」
「「ぎゃあああああああ!!!!」」


ヒソカが居なくなった途端に敵が姿を現したことに腹を立てたカメリアは怒りをそのままに“自在の砂鉄(ブラックキラー)”で2人の男を砂鉄で包み込むと、適当な方向に勢いよく見えなくなるほど遠くへ投げ飛ばした。

「はぁ…..はぁ….やっぱり私は舐められてるのね」

こうなったら全員返り討ちにしてやると逆にやる気になったカメリアを陰から見ているヒソカはクスクスと笑っていた。

それから約1時間毎にプレイヤーはカメリアの前に現れるが、必ず2人以上で現れ、皆バインダーのようなものを必ず出していた。暗黙のルールであろうと察した。

「今まで全員初手で投げ飛ばしてたから、相手が何しようとしてるかすら見てなかった….」

ゲームのシステムを利用した戦い方を見ておくのも大事だと今になって気づいたカメリアは、次は怒りそのままに投げるのを辞めて少し猶予を与えてみようと思った。

「そこの人ずっと隠れてないで出てきたらどう?」
「やっぱり気付いてました?」

カメリアの呼びかけに1人の男がバインダーを開いたまま木陰から姿を現してきた。

「カメリアさん、今日ゲームを始めたのですか?」
「!」

初対面のはずであるその男から名前を当てられ驚く。その表情を見た男はニヤリと笑った。

「そうですよね〜バインダーにカードが一枚もないのですから」
「プレイヤーの名前と相手のカードを把握するシステムがあるんですね」
「さぁて、どうでしょう?」

特に違和感を感じはしなかったが影に隠れながら何かをされたのだろう。余裕たっぷりの男は今までの中では警戒心が強いようで、カメリアとの距離をかなりとっている。
相手には初心者ということがバレているようなのでバインダーを閉じ、戦闘体勢をとった。すると、男はバインダーから一枚カードを手に取る。

追跡使用トレースオンカメリアを攻撃」
「カードで攻撃?!」

男が攻撃のスペルを口にするとバインダーからカメリアを目掛けて念が籠った攻撃が飛んできた。
攻撃をかわそうと素早く横に飛ぶとその攻撃はグンと軌道を変えて背中から当たってしまう。

「なっ!…………..?」

攻撃が当たったが特に痛みも違和感もなく自分の身体をみるが、外見にも特に変化はない。

「ふふっ」
「……」

相手の余裕な笑みに、自分が振り回されてるのかと思うと少し苛立ってきたカメリアは相手に殺意を向ける。

「さっきからちまちまと鬱陶しい」
「….っ!」

殺意を向けながらジリジリと男に滲みよると、その殺意に圧倒され男は後退りしながらバインダーから慌ててカードを探し、目的のカードを手に取ってスペルを唱えようとするとカードを持った手をガシッと掴まれた。

「なっ!い、いつの間に…」
「ふーん、カードってこんな感じなんだ…再来
リターン
?」
「り、再来使用リターンオン!マサドラ!」
「あっ」

男の後に回り、カメリアはカードがどんなものかを見た。
焦った様子でそのままスペルを口にすると男は不思議な力でどこかに飛んでいってしまった。

「はぁ〜〜〜もう….ああいう動きされると面倒臭いなぁ….」
「やぁ♦︎どうだい?このゲーム❤︎」

やっと戻ってきたヒソカが不機嫌そうなカメリアを見てニコニコとする。

「どうもこうも、全然わかんないですよ….なんか変な攻撃されちゃってそれが何かもわかんないですし」
「あぁ〜♦︎ 追跡トレース?それなら特に心配しなくても大丈夫だよ♠︎君の居場所があの男に監視されてるだけだからさ♦︎」
「あ、そうなんですね。監視されてるのはなんか気持ち悪いですけどそれならまぁ確かに……ん?」

食らった攻撃カードの説明を淡々とするヒソカの話を聞いて謎がはっきりし安堵したが、違和感に気づいてハッとする。

「ちょっと待ってください。ヒソカさんこのゲームのこと何も知らないんじゃないんですか?」
「僕は知らないなんて一言も言ってないよ❤︎」
「なっ……!ヒソカさんのバカ!!!!!!!!」

カメリアの大きな声が響き渡った。







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