長編 書き場
□干渉
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「どうして何も教えてくれなかったんですか?」
「だって面白いじゃん♦︎」
「面白くないです!!!」
あれからカメリアはヒソカにグリードアイランドの暗黙のルールやバインダーとカードの見方、使い方などを簡単に教えてもらいある程度理解ができた。
「まさかすれ違っただけでプレイヤーの名前が履歴に載るなんて….ん?」
プレイヤーの履歴を眺めているとヒソカの名前が見当たらず、逆にここにいるはずのない人の名前が視界に入る。
「ヒソカさん、クロロさんの名前で登録してるんですか?」
「そ♦︎その方が蜘蛛のメンバーは見つけやすいでしょ♣︎」
「あ….」
こうやって一緒にいる間に本来の目的を忘れてしまっていた。ヒソカはクロロと戦うために除念師を探しているのだ。もし、除念師が見つかってクロロが念を取り戻すとヒソカと殺し合いの決闘をする。すると、どちらかは必ず死んでしまう。それを考えるとカメリアはとても胸が苦しくなって顔をしかめる。
「あの….ヒソカさん「却下♦︎」まだ何も….」
「君がその表情をするときは決まってそれだからね♠︎」
“クロロさんとの決闘を諦めてくれませんか?”と言いたかったカメリアの言葉は発する前に却下されてしまった。
否定されるのはわかっていたがどうしても言わずにはいられなかった。
「どうしてそんなに命をかけて戦いたいんですか?」
「…..♦︎」
「って…ヒソカさんは小さい時からそうでしたね。今でも変わらず強い相手にしか興味がないんですね…」
「…..♦︎」
「私を隣に今置いてるのも、能力の使い方をしっかり取り戻した時に戦う為だけですよn…..っ!」
カメリアが話している間ずっと無言でそっぽを向いていたヒソカだったが、唐突にトランプをカメリアの首元に宛てがう。
「クロロとの決闘は絶対に譲らない♠︎君を隣に置いているのは僕の気まぐれ♠︎この先の動向を観察するのは許すけど邪魔はしないでね♣︎わかった?」
「….っ」
殺意があるわけではないが、ひしひしと怒りのようなものを感じカメリアは言葉に詰まる。ヒソカの方をチラッと見るとかなり真剣な表情で何を言っても聞いてくれないのだと悟った。
「わ、わかりました。」
「ならよし❤︎」
承諾するとヒソカはすぐにトランプを離し、いつもの調子に戻る。なぜ怒っていたのかカメリアには検討もつかなかった。何か理由があるのだろうかと色々と考えてみたが特に思い当たる節もなく、聞こうにもまた怒られると思い、考えることを諦めた。
「そもそも、除念師を探す邪魔をするつもりでいたなら、君はマチも敵に回さなくちゃいけなくなるんだ、そうするまでのメリットはあるのかい?♠︎」
「あ….」
今のヒソカの目的はクロロの念能力を取り戻すこと、それはもちろん幻影旅団の団員も願っていることであり、おそらく同じように除念師を探していることだろう。それを邪魔すると言うことは団員であるマチの邪魔をすることにもなる。マチにも嫌われ、ヒソカにも嫌われることになると分かっていながらもそれを阻止する必要はあるのだろうかと思い始めた。
「カメリアのやっていることは大きなお世話だよ♣︎」
「そう….ですね…ヒソカさんとクロロさんの問題に干渉しようと思ったのはただの私の我儘でしたね」
「そう、君には関係ないことなんだよ♠︎」
「……」
関係ない。はっきりそう言われると胸がズキッとした。
だが、ヒソカの話すトーンはなんだか柔らかく、傷つけるつもりで言ったようには不思議と感じなかった。
「わかり…ました。2人の決闘については、その….本当は嫌ですけど、邪魔をすることは諦めます」
「うん、それがいいよ♠︎僕にとっても、君にとっても♦︎」
ヒソカとクロロの決闘を止めるべくグリードアイランドをはじめ
ることになったカメリアは、開始して早々目的を失ってしまったのだった。
「あの….」
「ん?♣︎」
「邪魔はしないので、このまま一緒にいちゃダメですか?」
目的はなくなってしまったが、はっきりと「関係ない」と言われたことが胸に残ったカメリアは邪魔しない程度に干渉したいと思い、否定されないか恐る恐る尋ねる。
「それはOKだよ♦︎さっきもそう言ったしね♣︎」
優しいトーンのまま承諾されると、カメリアはホッと胸を撫で下ろした。
「だから君はこのゲームを楽しみつつ僕の側にいるといいさ❤︎」
「流石に全てのカードを集めるまではいかないですけど、そうさせてもらいます」
除念師を探すことを阻止することがマチの邪魔にもなると思うとその方法は諦めるしかなかったが、カメリアはクロロとヒソカの決闘を止めることをまだ諦めてはいなかった。
念を取り戻したクロロとヒソカの間に単純に割って入っても自分の力では止めることは不可能だろう。このグリードアイランドで過ごす中で何か方法がないか探そうと考えていた。
「カメリア♦︎」
「あ、はい?」
真剣に思考を巡らせていたせいで、ヒソカから呼ばれたことに気づかずハッとする。
「どうせまたロクでもないこと考えてたでしょ♠︎」
「えっ!?いや、そ、そんなことないですよ!」
「図星じゃないか♣︎」
「うっ」
カメリアがわかりやすいのか、ヒソカが鋭いのか、まだ決闘を阻止するためにカメリアが作戦を考えていることがバレてしまった。
諦めの悪い姿にヒソカはヤレヤレと呆れつつも怒っている様子は微塵もなく、こうなることがわかっていたかのように話を切り出す。
「除念師が見つかってこのゲームをでたら、昔の約束を果たそう♦︎」
「えっ?」
ヒソカの言う“昔の約束“がなんなのか咄嗟にはわからなかったが、すぐに思い出した。
「決闘……ですか?」
「そう❤︎もちろん前に言った通り、勝った時のお願いはあの時とは別でOKだ♦︎」
「つまり、私が勝てば決闘をやめてくれると言うことですか?」
「君が僕に勝てればね❤︎」
カメリアにとっては願ってもないチャンスだった。 相手は子供の頃とは桁違いに強くなっているヒソカではあるが、勝つことができれば確実に止めることができる。変に工作を練るよりは可能性が高かった。
「わかりました。それじゃあこのゲームをでたら決闘しましょう。その間ちゃんと修行します」
「楽しみにしてるよ♠︎」
負ければクロロとの決闘を諦めなければいけないが、それ以上にカメリアと戦う約束を取り付けることができたことに、ヒソカはとても嬉しそうな様子だった。
「もしヒソカさんが勝ったら何かお願いはあるんですか?」
「それはなーいしょ❤︎」
「えぇ…」
既に何かお願い事が決まっていることを意外に思ったが、内容を教えてもらえないことで何かロクなことがない気がしたカメリアは身震いした。