長編 書き場

□少女
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ゴンとキルアに会うため、修行をしているという岩石地帯に向けて歩いていると山だらけで荒れた地には似つかわしくない人工的なトンネルを見つける。
一直線に掘ってあるようで目的地までの近道になりそうだと思ったカメリアはそのトンネルを進んだ。トンネルを抜け、真っすぐに視線を送ると突き当たる山にはまた、同じように真っ直ぐに掘られたトンネルがあった。

「これ掘った人はどれだけ真っ直ぐ進みたかったんだろ…」

掘るよりも迂回した方が遥に早いだろうに、と思いながらも有り難くそのトンネルを進む。

「カメリア〜〜!!」
「えっ!?」

トンネルの奥の方から聞き覚えのある声で名前を呼ばれ驚く。

「2人ともどうして?」
「待ちきれなくて迎えに来ちゃった!」
「すれ違いにならなくてよかったな」

いつも通り明るく話すゴンとキルアを見てカメリアは嬉しくなり微笑むが、2人とも外見はボロボロで本当に修行を頑張っていることが伝わった。

「オーラも以前とは桁違いに増えてる。いい師匠に出会えたみたいだね」
「うん!厳しいけどとてもいい修行させてもらってるよ!」
「口うるせぇババアだけどな」
「女の人なんだ?」

師匠と言われると自然と男性を想像していたが口ぶりからに年配の女性のように感じた。年配の女性ハンターはあまり見ないので2人の師匠と会えるのが楽しみになってきた。

「きっとカメリアビックリするよ!」
「えっ?ビックリ?」
「あー初見は確かにそうかもな」

2人が顔を合わせてシシシ…と笑う。
どう驚くのだろうかと疑問に思いながらも、2人の案内で修行場所まで向かい始めた。

「おーい。戻ったぞ〜」
「あら、早かったのね」
「!」

程なくして目的地に辿り着くと、殺風景な岩石地帯の一箇所にポツリと1人の少女が座り込んでいた。
キルアが声をかけるとその少女は振り返って3人の方に顔を向けた瞬間、カメリアは衝撃を受けた。

「えっ….えっ?…..ビ、ビスケ……さん…..?」
「えっ!?カメリア、ビスケと知り合いなの?」

普段から愛用させてもらっていた"魔法美容師(マジカルエステ)"の持ち主が目の前に現れ、尚且つ姿が幼少期に見たままであったことに戸惑いを隠せず固まってしまう。
ビスケはカメリアを見てあまりピンとこなかったが、顎にてを添え考え出すと、ハッとした様子でカメリアに指を指す。

「カメリア…..カメリア….あ!思い出したわさ。アンタ、流星街の近くの村にいた…」
「あ、はい!そのカメリアです!」
「懐かしいわね〜、一瞬しか会わなかったから忘れてたわさ。それにしてもあれから15年近くは経ってると思うんだけど、あまりにも若くないかしら?」
「いや…それはこっちのセリフですよ…あまりどころかそのままじゃないですか…」

2人の再会話に花を咲かせている傍らで、ゴンとキルアは全く付いていけなくなり呆気に取られてしまっていた。

「あ、2人ともごめんね。ビスケさんは私が子供の頃に少しだけ会ったことがあったの」
「すごい偶然だね!」
「違う意味で驚かせることになったな…」

キルアの“違う意味で“という発言に疑問に思ったことがあった。

「そういえばキルアくんはビスケさんのことババアとか言ってたけど、どういうこと?どう見ても女の子だけど…」
「げっ」

カメリアの言葉にビスケはキルアの方にガンを飛ばして盛大な拳骨を食らわせた。キルアはかなり痛そうにその場にうずくまり、ゴンは苦笑いをする。どうやらよくある光景のようだ。

「はぁ….あたしは一応50超えてるわさ」
「へっ….?………えぇ!?!?!!?!?」

ビスケの唐突の年齢公開にカメリアは本日何度目かの驚きで倒れそうになる。

「折角の再会だわさ、今日は思い出話でもしましょうか」
「最近カメリアとゆっくり話せなかったし賛成ー!」
「私も、みんなの話たくさん聞きたい!」

日も落ちてきてビスケは焚き火に火をつけると、4人で焚き火を囲み会話に花を咲かせる。
カメリアの幼少期の話、ゴンとキルア、ビスケのこれまでの旅の話。カメリアが経験したことのない旅の話をたくさん聞いて、経験したわけでもないのにとてもワクワクして時間が経つのも忘れるくらいにのめり込んだ。

「そもそも、どうしてカメリアがこのゲームにいるんだ?」
「やっぱり聞かれるよね…本当は目的があってこのゲームに来たんだけど、その目的が果たせなくなってしまったから今はシンプルにグリードアイランドを楽しんでるだけだよ」

当然、カメリアがどうしてG・Iに来たのかも尋ねられ、全て正直に言えば2人にまた余計な心配をかけると思い、詳しい内容は伏せ、簡単に自分の現状を伝えた。

「またヒソカに絡まれでもしたのか?」
「えぇ?!いや、確かに多少関わりはあったけどそんな大したことじゃないよ!」
「カメリア大丈夫?」

キルアに図星をつかれ慌てる。

「今の所命の危険にあったことは多分ないから大丈夫だよ」
「昔からの知り合いとはいえ、あまり関わるなよ…ろくな事がなさそうだし」
「うっ…善処します…」

遠ざけるどころか、自ら関わりを持とうとし始めたカメリアには耳が痛い言葉であった。

「そうそう、俺明日からハンター試験受けに行くよ」
「えっ!もうそんな時期だったんだ!」

日付の感覚を忘れてたカメリアはハンター試験と聞いて、今までは退屈な時間から1年が長く感じていたが今年1年は色々なことがあり、いつもの何倍も時が経つのが早く感じた。

「キルアなら絶対合格だもんね!」
「むしろハンターじゃなかったことを忘れてたよ」
「そうだ!カメリアはグリードアイランドを普通に遊んでるだけなら、これからは俺たちと一緒に行動しない?」
「えっ?」

ゴンからの突然の提案に戸惑う。ヒソカの隣にいることは黙っていた為2人は知らない。悩む様子をみたビスケが口を開く。

「何言ってるわさ、アンタらはまだ修行の身。カメリアと一緒にいる時間はないよ」
「あ、そっか…」

ゴンは悲しそうにするが、ビスケはカメリアに向けてウインクをした。

「!」

なにかを隠してることを察したビスケはカメリアに助け舟を出した。

(ありがとうビスケさん…)
「そういう事だから、キルアが試験に行ってる間ゴンは修行の続きよ」
「はーい」

会話もおひらきになり、明日に備え就寝することになった。カメリアも一緒にその場で休み、翌日にマサドラで解散となった。







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