長編 書き場

□嫉妬
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マサドラに戻ってゴン、キルア、ビスケと別れた後、ヒソカに言われた通り交信
コンタクト
をしてみるが、反応がなかった。

「ヒソカさんが出ないなんて珍しい。取り込み中かな?」

用事が済んだら連絡しろとは言われたが、普段はスペルカードを所持していなかった為、数日おきにマサドラで合流していたので繋がらなかったことは特に重きを置かなかった。

「暇だし新しい街に行こうかな!」

ヒソカから連絡を待つのも退屈するのでカメリアはまだ訪れたことのない街へと向けてマサドラを出た。








「すごいファンシーな街が出てきたな….」

新しい街を発見したカメリアだったが、トレードマークなのだろうか、巨大なハートの動くオブジェが見える。そしてどこから聞こえてくるのか、アイーーンアイーーンと効果音のようなものがずっと鳴っていた。

「どんな街なんだろう…」

新しい街へのワクワクと外観の奇抜さへの不安を抱きながら一歩を踏み入れると、すぐさま人が接触してきた。

「ようこそ、恋愛都市アイアイへ。君はこの街は初めて?」
「へっ!?は、はい、初めてです」

突然話しかけられ驚き、声の主の方へ視線を向けるとメイクを落としたヒソカ顔負けの美形な男性であった。

「よければ僕が案内するけれど、時間大丈夫?」
「いいんですか?ありがとうございます!」

誘いを承諾するとその男性はカメリアの肩を抱き、近くの設備から順番に案内し始める。何かしら動作をする男性からはキラキラというエフェクトが見えてきそうなほど輝いていた。
カメリアは男性の動作や恋愛都市アイアイという街の変わった名前には違和感を覚えながらも、相手から悪意を感じなかった為快く誘いにのってしまった。

「ここは僕のお気に入りの喫茶なんだ、よければお茶でもどうだい?」
「そうなんですね?それでは入りましょう」

男性がエスコートし、喫茶のテラスに座る。カメリアはカフェラテを注文し既視感を覚える。

「そういえば、ヒソカさんともこうやって過ごしたな…」

天空闘技場で修行していたころにヒソカに誘われ喫茶店に行ったことを思いだした。よく見てみれば、今話している男性は喋り方も含めどこかヒソカに似ている気がする。カメリアはなんだかヒソカと一緒に過ごしている気分になり頬が緩んだ。

「そして、あそこに見える建物が図書館なんだ。大きいだろう?」
「図書館…」

ヒソカに似た男性はテラスから見える建物を紹介し続けていると少し離れたところに見える大きな図書館にカメリアは食いついた。
それから30分ほど雑談をしてその男性とは別れた。去り際に連絡先を渡されたがこちらから連絡することはないだろうと思いつつも、とりあえずポケットにしまい込んだ。
そして、会話の間でもずっと気になっていた図書館の方へ向けて歩き出す。

「すごい高い建物だ…あれが図書館なのかな…」

グリードアイランド内では全体的に高い建物が多く、視線が高いまま歩いていたため、前方が全く視界に入っておらず人にぶつかってしまう。

「わっ!ご、ごめんなさい!!」
「こちらこそ、よそ見しててごめんね!大丈夫?」

ぶつかった勢いでカメリアは尻餅をついてしまったが、ぶつかった相手は20cm程も背丈の高い男性でびくともしなかった。その男性は申し訳なさそうに腰を少し落としてカメリアに手を差し伸べる。

「ありがとうございます…」
「地図を見ながら歩いていたから、全然気づかなくてすまない」
「いえ、私も図書館の方を見ていたので」

男性の手をとり立ち上がると、これまた美しい男性の顔が視界いっぱいに広がる。この街には顔のいい男性しかいないだろうかと言いたくなったが心の中で抑えておく。

「図書館?君も図書館に行くの?」
「え、えぇ…あなたもですか?」
「ああ、そうなんだ!よければ一緒に行かない?」

なんという偶然なのか、ぶつかった相手も図書館へと向かう為に地図を見ていたようだった。
向かうことに対して特に断る理由もないカメリアは快く承諾しようとする。

「はい、大丈夫でs「大丈夫じゃない♠︎」

最後まで言い終わる前に両肩に圧がかかり、ドスのきいた声が背後から聞こえてきた。

「ヒ、ヒソカ…..さん…..?」
「君はなんでそう全てのフラグを回収していくのかな?♣︎」
「え、えーっと…なんのことですか…..?」

明らかに不機嫌なオーラを出され冷や汗がダラダラと垂れるが、なぜそんなに不機嫌なのかがわからず恐る恐る尋ねると、本当にわけがわからなさそうにするカメリアを見てヒソカはため息を吐く。

「この街は居るだけで色々な恋愛イベントが発生する場所なわけ♣︎で、君はそのイベントのフラグを全部回収してる。OK?♦︎」
「そ、そうだったんですか…知らなかったです…どうりで顔がいい人が多いんですね」

とりあえずヒソカからの殺気は抑えられたが、今度は腕を組みながら呆れたような表情をされる。殺気にやられたのか、カメリアとぶつかった男性はいつの間にかいなくなっていた。

「カメリアが恋愛都市アイアイに入るところを見たからまさかと思ったけど、ほんとに全部引っかかっていくのは流石に予想外だよ♠︎」
「えっ、全部見てたんですか!?」

見られていたことには全く気づいていなかった。完璧に気配を消されたことを悔しく思っていると、また不機嫌そうなオーラを出される。

「随分と楽しそうにしてたじゃないか♠︎」
「え、そうですか?」
「喫茶店でニコニコしてただろう?♦︎」
「あぁ……」

なんだかいつもと様子の違うヒソカに戸惑いながらもその時のことを思い出しながら素直に話す。

「お相手がメイクをしてない時のヒソカさんに似ていたのと、天空闘技場にいたときにヒソカさんと喫茶店に行ったことを思い出したから…ですかね?」
「!♦︎」

まさか自分のことが出てくるとは思っていなかったヒソカは面食らい言葉が何も出なかった。
最近になってその表情を度々見ることが増えてカメリアはフフッと笑う。

「ヒソカさんって大分表情豊かになってきましたね」
「…….♣︎」

カメリアの言葉にヒソカは一瞬複雑そうな表情をしたが、気に食わなかったのかいつもの上っ面の笑みを見せる。

「カメリアがボクのことを考えてたなんて嬉しいね❤︎ゲームをでたら一緒行こうか♣︎」
「次はちゃんと事前に伝えてくださいよ。あ、今度もピエロメイクはなしでお願いします!」
「気が向いたらね♦︎」

約束事が出来、嬉しそうに図書館に向けて歩き出したカメリアをヒソカは立ち止まったまま目で追った。

「らしくないな、ボクが…本気で嫉妬だなんて♠︎」






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