長編 書き場
□成長
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「”空間転移(テレポーテーション)”………よし…」
ゲームを進めつつ修行をする中、カメリアは移動のスペルカードを使うわけではなく、わざわざリスクの高い"盗み喰い(アビリティハンター)"で”空間転移(テレポーテーション)”をしてマサドラで借りたホテルの一室に移動した。これも修行の一貫である。
「これで汎用性が高くなった」
本来"盗み喰い(アビリティハンター)"を使用すると、その後1日念が一切使えなくなるのだが、今のカメリアはまだ念が使える状態だった。
「そして、"魔法美容師(マジカルエステ)"。"伸縮自由の愛(バンジーガム)"。」
1回につき1つの能力しか使えなかったが、複数同時に能力を発動する。
「…….あ、消えた…」
それから15分ほどして発動していたクッキィちゃんとガムは消え、念が使えなくなってしまった。
「以前"伸縮自由の愛(バンジーガム)"だけの使用で30分だったから流石に同じ時間は使えないか…」
一定量の間能力を複数使えるようになったが、1つのみの使用と比べて使える時間は短くなってしまう。しかし、それでも複数使えるようになったことは戦略の幅が広がり便利にもなったと言えるだろう。
修行を重ねるうちに"盗み喰い(アビリティハンター)"も進化したのだ。
「このことはヒソカさんにはバレないようにしておかないと」
ハンター試験以降、念能力者と対峙することが増えたとはいえ、実践経験数や頭の回転の速さ、適応力がヒソカよりも劣っていることを理解しているカメリアは少なくとも作戦と隠し球を持つことは必須だった。すでに念能力を知られていることは不利になるが、それを逆手にとるためにも開花した能力は隠し通さなければならない。
「何を使うか、どう使うかもしっかりシミュレーションしておかなきゃ…」
決闘日はまだまだ先になることだろうが、すでに緊張していた。
今は念が使えなくなってしまったのでまともに修行をすることもできず、外に出たところでこのハンター専用ゲームの中ではただただ狩りの対象となってしまうだけなので一日大人しく部屋の中で過ごすことにした。
『あなたに対し他プレイヤーが交信
を使用しました』
「!」
ちょうど退屈になりベッドに座ったところでバインダーが開き、誰かから交信
をされた音声が流れる。相手が誰かわかっている様子で交信
を受けた。
「やぁ♦︎」
「ヒソカさん、どうしたんですか?」
最近は2-3日に一度、合流するためにヒソカの方から連絡が入るようになっており、時間や日数は彼の気まぐれで決まるようだ。
「明日、暇してるかい?♣︎」
「ヒソカさんと違って私はいつでも暇ですよ(修行はしてるけど)」
少し皮肉めいたことを言ってみるがヒソカはクックックと笑うだけであっさりスルーして用件を伝えてくる。
「それじゃあ明日散歩でもしよう♦︎」
「はい?」
散歩というあまりヒソカの口から聞かなさそうな言葉にカメリアは頭いっぱいに疑問符を浮かべた。
今まで特に誘われたりなどすることがなかったのでどういった内容かと少し身構えていたが、ただの散歩というのも拍子抜けした。
「い、いいですけど….」
「アイアイの入口で待ち合わせね❤︎それじゃ♦︎」
「あっ…」
返答を聞くなり、すぐに通信を切られてしまった。
さっきまで緊張が嘘のように緩み、その日カメリアはゆっくりと休むことができた。
「お待たせ♦︎」
いつもと変わらぬ装いでヒソカはやってきた。
その様子から特別な用事があるわけでもなさそうだった。
「ヒソカさんが散歩に誘うなんて、なんか意外です」
「そう?♣︎暇になっちゃったからね〜♠︎」
「暇になった…..?」
今まではそんなことを言ってことなかったヒソカが暇になったからと何かしら誘ってきたことでカメリアは確信した。
ヒソカは旅団の人と会ったということを。
しかし、そうだとして今の自分にできることは何もないので特に聞くことはしなかった。
「そうなんですね…ところでどこに行くんですか?」
「うーん♦︎適当に❤︎」
「目的はほんとにないんですね…」
結局、普通にあてもなくフラフラと2人で散歩をすることになった。
「修行、ちゃんとしてるみたいだね♦︎」
「わかっちゃうんですね」
「オーラの量や君を纏うオーラの感じがより僕を興奮させてくれるからね❤︎」
「ひっ…それやめてください!な、なんか別の意味で怖いです!!」
他愛もない会話をしながら歩いていると、霧が発生してきた。それでも尚止まることなく進むと大きな湖が見えてきた。
「何だか霧が濃くなってきましたね。ちょっと休憩しますか?」
「そうだね♦︎ちょうどいいし、水浴びしてくるよ♣︎」
「へっ?」
そういうとヒソカは手際良く衣服を脱ぎ出した。
「ちょっちょちょっとヒソカさん?!?!?!」
「何?♦︎」
「何じゃないですよ!!!いきなり脱がないでください!!!!」
目の前で衣服を脱がれカメリアは一瞬思考停止したが、即座に顔を背ける。危うく全裸を見てしまうところだった。
「クックック♠︎そんなに照れるなよ♦︎カメリアも一緒にどうだい?❤︎」
「もう!からかわないでください!!私は少し離れたところに居ますからね!!!終わったら呼んでください!」
「残念♦︎」
顔を真っ赤にしながら怒って離れていくカメリアをヒソカは面白そうに笑った。
「ったく…ヒソカさんには羞恥心ってものがないのか….」
はぁと大きくため息を吐いて、ヒソカの視界に入らないところまで離れてしゃがみ込む。彼からの呼びかけがあるまでその場でじっと待つことにした。
「!」
頭上で黄色い光がヒソカの方へ飛んだのが見えた、おそらくスペルカードで彼の元に誰かが飛んできたのだろう。敵かもしれないと思い急いできた道を戻った。
「ヒソカさん!大丈夫でs」
「ん?♣︎」
「「「カメリア!?」」」
カメリアの視界に飛び込んだのは、ヒソカの元に飛んできたゴン、キルア、ビスケと見知らぬ男性。そして、髪のセットやメイクの落ちた全裸のヒソカだった。
「〜〜〜〜っっ!!!/////ヒソカさん早く服着てください!!!!!!」
「今日のカメリアは忙しくて面白いなぁ♦︎」
「怒りますよ!!!!」
「もう怒ってるじゃないか♣︎」
また顔を真っ赤にしてヒソカに怒鳴りつけているカメリアを、やってきた4人は呆然と見ているしかなかった。