短編
□addict,
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今日、紫が血を吐いた。
別にこれが初めてじゃなかったけど、私はひどくうろたえて何も出来なかった。
そうこうしている間にも紫は白い粉を求めて喚き声を上げる。
「ィ、いァァぁ!あぁぁぁあぁああぁぁぁ!!」
最近では薬がきれるとわけもわからない言葉を発するようになった。脳の方がイかれてきて、言語すら失いかけているらしい。
「紫……むらさ、き!」
「ッ!ァァアぁアぁぁあ!!」
いくら押さえても私の腕の中で暴れ続ける妹。過去の妹とは見違えるほどに変わってしまった。
私が側にいながらこんなことになるなんて。悔やんでもどうにもならなかった。
「おぅ、荒れてんなぁ。今日も」
語尾に独特のアクセントを付けて、男が姿を現した。
帽子をすっぽりと被った猫背の男。Mr.KKと呼ばれる男だった。
「…!ッ…あ、くスり!」
紫がいっそうもがく。彼女にはこの男はしっかりと見えているらしい。勿論それは男の持ってくる白い粉欲しさのためだが。
「よォ紫。相変わらずだな」
「く、す…り……ックス、り…!」
「慌てんなよ、イイ子だから」
そう言って男は紫の頭を撫でた。
紫は苦しそうに呼吸を繰り返しながら、肩を抱いて震え出した。
「見ろよハニー。アンタの大事な妹ちゃんはもう駄目だ。薬やらなきゃまともに喋れもしない」
男はこちらを見て哀れんだように笑う。
実際、紫を哀れに思っているのだろう。この、違法薬物に頼らなければすぐにでも死ぬであろう紫を。
確かに彼は薬をここへ持ってくるが、それは紫を生かす為でもあった。彼もまた、妹を好いていたのだから。
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