短編
□常識反対説
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刃が肉に食い込む感覚。人間は思ってたより硬かったようだ。
溢れる鮮血を浴び、俺は唯、それを見ていた。
ついさっきまでは生きた人間だった、それ。名前……忘れた。もうどうだっていい。
あぁ。またやってしまったのか。
「ナカジ…っ!お前どうして…!」
いきなり俺の肩を揺すったのはクラス担任だった。
いつもジャージ姿のダサい体育教師。そうとしか俺は認識していなかった。
見られていたのか、全て。
「お前……先生になんてことを…!!」
先生?あぁ、これはあのオレンジの英語教師か。
俺はこいつを――――
刺したのか ……
心臓を一突き。ほぼ即死。
慌てる担任に比べ、俺は怖いくらいに冷静だった。それもそうだ。こういうのは、初めてじゃない。
勿論相手は人ではなかったが、昔はよく犬やら猫やらで遊んだ気がする。おかげで生物テストの人体構造はいつも満点だった。
そういやそんなことをしても父母に怒られた記憶はない。あの頃には既にどちらも他界していたのだろうか?よく思い出せない。まぁ、そんなことどうでもいい。
俺は殺人の罪でゲンコウハンタイホになるのか。まだ15だってのにブタ箱行きか。そう思うと、どこか笑えた。
こんなときでも笑っていられるから、だから俺は他と違ったらしい。
普通、こういうときはパニックになったり泣きだしたりするらしい。そんなの、俺の『普通』とは掛け離れていたのだが。
奴は異端だったというのに、奴の死は大勢の人間を悲しませた。
同じだと思ったのに、奴も違ったらしい。
だから、惹かれた。
だから、殺した?
感情が渦巻く。
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