短編

□常識反対説
2ページ/4ページ

 



――――


刃が肉に食い込む感覚。人間は思ってたより硬かったようだ。

溢れる鮮血を浴び、俺は唯、それを見ていた。
ついさっきまでは生きた人間だった、それ。名前……忘れた。もうどうだっていい。
あぁ。またやってしまったのか。




「ナカジ…っ!お前どうして…!」


いきなり俺の肩を揺すったのはクラス担任だった。
いつもジャージ姿のダサい体育教師。そうとしか俺は認識していなかった。

見られていたのか、全て。



「お前……先生になんてことを…!!」


先生?あぁ、これはあのオレンジの英語教師か。
俺はこいつを――――



刺したのか ……







心臓を一突き。ほぼ即死。
慌てる担任に比べ、俺は怖いくらいに冷静だった。それもそうだ。こういうのは、初めてじゃない。
勿論相手は人ではなかったが、昔はよく犬やら猫やらで遊んだ気がする。おかげで生物テストの人体構造はいつも満点だった。

そういやそんなことをしても父母に怒られた記憶はない。あの頃には既にどちらも他界していたのだろうか?よく思い出せない。まぁ、そんなことどうでもいい。







俺は殺人の罪でゲンコウハンタイホになるのか。まだ15だってのにブタ箱行きか。そう思うと、どこか笑えた。


こんなときでも笑っていられるから、だから俺は他と違ったらしい。
普通、こういうときはパニックになったり泣きだしたりするらしい。そんなの、俺の『普通』とは掛け離れていたのだが。



奴は異端だったというのに、奴の死は大勢の人間を悲しませた。
同じだと思ったのに、奴も違ったらしい。


だから、惹かれた。
だから、殺した?



感情が渦巻く。




+
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ