短編
□常識反対説
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奴は誰にでも優しかった。誰もが奴を好きだった。
それが嬉しくも悔しくもあった。
それで、俺が考えついた答えは………
『じゃあアンタはいっそ誰のものでもなくなればいい』
それで刺した。
奴は、これで誰にも縛られない。
これで奴は『しあわせ』になる、そう思ったのに。
『人殺し!』
……あぁぁあぁぁぁ。
やはり俺は異端なのか。異端のままなのか。
やっと、やっと認められると思ったのに。これで、俺も『普通』になれると思ったのに。
やっと………
俺は裁判の途中で最期を迎えた。
散々俺の『普通』についてを論じた後、その場で舌を噛み切ってやった。
会場は大混乱。
俺はまるで武士が切腹したときのような曇りない心で自分が誇らしかった。
この素晴らしき腐った世界に別れを告げるときふと思った。
やっぱり俺は『異端』のままだった。
………とかな。
… End
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