短編
□addict,
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「これからどうするつもりだ?もう紫は長くはもたねぇし。なんにせよアンタも金なんかもうないんだろ?」
図星だ。
この家にあった財は全て薬の為に使った。残っているのはあばら屋同然の家と土地、そしてこの身ひとつだ。
「どうすんだ、ハニー。お前だけならまだ生き延びられるだろ。紫を売っぱらえば多少動かせる金が入る」
売る、といってもたいした金にはならないだろう。何せヤク中の女、何の役にも立ちはしない。見世物小屋か売春婦がせいぜいだ。
しかし、それで手に入るはした金でも、私一人が生き延びるには充分だった。
KKに頼めば裏の仕事は探してくれるだろう。なんなら街のヤクザとつるんで水商売をやってもいい。
生き延びるだけなら、方法はいくらでもある。
「何なら俺が買ってもいいぞ。死んだら死体は返してやるし」
「……お断りするわ」
ほう、KKが窺うように息を吐いた。
「どうせ、この子は死ぬわ。だったら、私は最後までこの子といたいもの。さぁ、KK、薬を頂戴。今回分くらいなら払えるわよ」
財布の中身はこれからの食費にしようと思ってたけど、やめた。
私はこれ以上、苦しみながら狂っていく妹を見ていられなかった。妹の症状が、もはや治りはしない禁断症状が一時でも治まるのなら、空腹感なんてたいしたことではなかった。
KKは哀しそうに笑ってから、白い粉を一袋、こちらに手渡した。私は財布ごと金を投げるように渡し、急いでボロボロになった紫の元へ駆け寄った。
「ホラ、紫ちゃん、お薬よ。大丈夫?一人でできる?」
紫は返事もせずに、私の手から白い粉を奪い取った。
彼女の顔は安堵の色を浮かべていた。
「アンタの妹への溺愛っぷりにゃ流石の俺もついていけねぇよ」
KKは笑う。
私への皮肉の言葉のはずが、何となく自嘲のように聞こえた。
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