短編
□addict,
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KKが銃を取り出す。私は真っ青になってそれに手を伸ばした。
「KK!アナタまさか…!」
「聞いたろ、今の。この女はもう駄目だ」
「そんな…!」
「死にたがる人間を生かすのは拷問に等しい。特にこの女は正当な理由があって死にたがってるんだ。ならば、殺してやるのが打倒だろ」
「やめて、やめて頂戴KKッ!紫を、妹を殺さないで…ッ」
「まだわからねぇのか!」
KKが低く吠えた。
私は驚いて思わず口をつぐんだが、紫には届いていなかったようだ。
「その女が望むのは、死だ。苦しみながら、アンタの側で生きることじゃない」
強い口調。確固たる意思。
それには刃向かえない何かがあった。
右手に握られた真っ黒な銃。彼はそれを私に差し出してこう言った。
「アンタが殺せ。俺に殺られるよりは救われるだろ」
私は、心ではそれを拒絶していたけれど、実際は右手にしっかりと銃を握っていた。
「頭を狙え。それが一番苦しまずに済む」
言われた通り、私は銃を紫の頭へ向けた。
そして一発で決める為に、一歩一歩を距離を詰め、銃口を、額に押し当てた。
紫はそれすら分かっていないらしい。俯いたまま、呪文のように同じ言葉を呟いていた。
「紫ちゃん……」
「殺して、殺して殺して殺して…コロし、て、コロシテ……」
音が出ていなくとも、口の形だけで「殺して」を繰り返す。それがまるで呼吸をすることのように、極自然に。
「大丈夫よ紫。あなたのあとは私、すぐ、後を追うから……」
泣きながら、でも笑いながら。私は、引き金を引いた。
血が。ひどく飛び散った。
鼻孔の奥に突き上げる鉄の臭いが吐き気を誘う。
足元に転がる妹はもう息をしていない。それがよくわからなくて、悲しみが湧くのにしばらくかかった。
「約束よ、紫。私、今から行くからね……」
銃口を、こめかみに。
泣きながら笑って、もう一度その引き金を引いた。
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