短編
□addict,
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あれから六年。
町並みは随分変わり、当時の面影も大分薄まっていた。
私は死ねなかった。
全てはKKのせいだ。
銃はかつん、と音を立てただけで、私の頭が吹き飛ぶことはなかった。
「え…」
確かに引き金を引いたのに。
銃口をこめかみにあてたまま、何度も何度も引き金を引く。それでも私は死ななかった。
「悪いな、ハニー。弾は一発しかないんだ」
背後で意地悪く笑う男。気付けば私はその男を殴り飛ばし、馬乗りで首を締めていた。
「KKェ……!」
「く、俺は最初からこのつもりだった」
彼は笑う。
紫を救うには殺すしかなかったと。手を降すのが私だとわかっていたと。そして愛した女を奪った罪を生きて償ってもらうつもりだと。
「生きて、償え。アンタが紫を薬漬けにしたようなもんだろう」
違う、思っていても言葉は出てこない。代わりに涙がとめどなく溢れた。
紫、大切な大切な紫。
あなたを幸せにしてあげると約束したのに。結局私にはできなかった。いつぞやのあの侍に渡してしまえばよかったのか。今となっては、後悔ばかりが頭をよぎる。
「KK……」
「何だ」
「…仕事を、紹介してくれないかしら」
「……あぁ」
あの日から、六年。
紫を忘れたことはない。
けれど私は生き続ける。
それが罪滅ぼしになるとは思わないけれど、紫は、きっとそれを望んでくれると思うから。
… End
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