短編

□哲学者の甘美なる憂鬱
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「濡れるのが面倒だからじゃないですか?」

「では、何故濡れるのは面倒なのでしょう?」


「…服や体を拭かなくてはならないじゃないですか?」

「では何故濡れた服や体は拭かなければならないのでしょう?」


「……濡れたままでは風邪を引きますし、部屋が水浸しになってしまうからではないですか?」



「……成る程」


テント=カントはそう言って顎に手をやった。

「その通り。理に適っていますねぇ」


この男はこれだから嫌いだ。
どうでもいいことに固執し質問を繰り返す。自分が納得するか、こちらが答えに詰まるまで、それは終わらない。



「しかしそれは雨に濡れるのが面倒な理由ですよね?雨が嫌われる理由とは、いくらかズレていると思いませんか」

思いません。
そう答えたところで無意味だ。
この男の中で解決していない限り、この流れは終わりはしない。





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