短編

□緋色、蒼き海に沈む
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「可哀相にな。ナカジ君がいなくなったのが、相当ショックだったんだな」

何も知らないリュータは純粋にさゆりの身を案じていた。

病院からの帰り道。
僕のすぐ後に見舞いに来たリュータと二人でアイスをかじりながら帰路を進む。


「やっぱ兄弟がいなくなるとああなるのかな。俺は弟がいなくなるの大歓迎だけど」

リュータは四人兄弟の長男だ。生意気盛りの弟達とは日々喧嘩が絶えないという。
僕は一人っ子だからリュータやさゆりの感覚はわからなかった。


「てゆか俺さ、さゆりとナカジ君って付き合ってんだと思ってたし。だから倒れるほどショックだったのかなって」

恋愛話に疎いリュータが言うのだ。信憑性は低い。
だがこれが彼の親友である学年一の情報通に聞いたとすればそうとも限らないが。


「タロー、お前ナカジ君と仲良かったよな?ナカジ君がどこにいるか見当着かないのか?」

ひやりと。
背中を嫌な汗が伝った。
僕は知ってる。
ナカジがどこでどうなっているのか。

「ま、知ってたらとっくに探してるか。悪いな、責めるような事言って」

何も知らないリュータは、大きく伸びをして空を仰ぐ。


「もう一週間か……ナカジ君、どうしてるのかな…?」

独り言のような呟きを、僕は聞こえない振りをするしかなかった。





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