短編

□メモワール
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あれから10年も経つが、今だに彼女の事が頭から離れない。

あの時の彼女の重さ、体温。そしていまわの際に動いた唇。
全てが染み付いてしまったかのように鮮明に覚えている。
あの時彼女は何を言おうとしたのだろう。俺への恨み言だろうか、それとも他の何かだったか。いくら考えても答えは見つからなかった。

もしかしたら、彼女は知っていたのかもしれない。
養父が彼女の命と、僅かな財産を狙っていた事。そして、俺がその依頼を引き受けたことも。
だからこそ全てを受け入れて自ら死を選んだのかもしれない。だとしたら俺は暗殺者失格だ。依頼内容がターゲットにばれていたなんて、一番あってはならないことなのに。




「ぼんやりしてどうしたんですか、KKさん?」

彼女そっくりの、ブロンドの少女が笑う。
これは俺への罰だろうか。


「…いや、何でもない」

「ふふ、おかしな人」



思えば、あれが俺の初恋だった。罪人には相応しい、決して叶わない、短すぎた恋。
俺はこれからも彼女の事を忘れることはないだろう。同じ顔の少女の側で生きながら、ずっと。






       … Fin



 
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