短編

□bone,
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「ようこそ、お美しいレディ」

不意に奥から綺麗なテノールが響いた。

「ハンドルネームをどうぞ」

「ハニー、よ」

「ハンドルネーム『Honey』さん……えぇ、えぇ、確かにご依頼頂きましたね。さぁ、骨をお返し致します」

現れた男はこれまた可笑しな恰好だった。
男はパーティー用の尖んがり帽子を首まですっぽりと被っている。その中からは髪ではなく、色とりどりの紙の束が長く垂れている。私やピエロより遥かに背が高い。そのためか、妙な威圧感を放っていた。

「申し遅れました、私は葬送サーカス団の団長。テント=カントと申します」

テント=カントは頭を下げたが帽子を取りはしなかった。やはり、顔は出さないつもりだ。顔を見せない人間は信用ならない。

「挨拶はいいわ。それより、妹を返してちょうだい」

「えぇ、勿論。こちらになります」

男がポケットから取り出したのは笑えるぐらいに小さな瓶だった。
コルクで詮をされたそれは片手に収まってしまうほどしかない。その中に、殆ど粉に近い白い破片が幾つか入っている。


「こちらが、妹さんになります」


信じられなかった。
妹が。私の大切な妹が、こんなに小さくなってしまった。こんなに小さな瓶の中に、妹が。

私はその場に崩れ落ちた。
妹の入った瓶に触れることも出来なかった。
喉の奥が痛む。そして心臓も。人殺しとなった私にそんな資格はないかもしれないが、心が痛くて仕方ない。私の妹が、たった一人の家族が、こんなちっぽけなかけらになってしまうなんて。


「私共としても残った骨は全て集めたのですが……」

テント=カントは謝罪と共に頭を下げた。
やはり、帽子は取らないままだった。

「…仕方が、ないのよ。骨が残らないのは……」

私のせいだ。
私が側にいながら、あの娘は。
私のせいで。





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