伯爵と妖精
□猫
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「リディア、入るよ」
ほぼノックと同時に開けられるドアにいつもならもう入ってるじゃない、等と非難の声がとんで来るのだが今日はその声の主はいなかった。
「あれっ、どこいったんだろう」
まだ休憩するには早い時間、仕事をサボるとは考えにくい。リディアを探しているとレイブンを見つけた。
「レイブン、リディアを見なかった」
「リディアさんならネコとお庭にいらっしゃいます。」
「・・・ニコと?」
「いえ、ネコです」
「ニコ?」
「ネコです。」
「だからニ「オレはネコじゃねぇっっ」」
「あれっニコ。ここにいたんだ。じゃぁリディアと一緒にいるのは??」
「・・・ですからネコです。」
「あぁ、ごめんごめん。ネコね。」等とわざとらしい笑いを含みながらエドガーは「わざと間違えただろ〜」というニコの叫び声を尻目に庭に向かった。
「リディア、ここにいたんだね。探したよ。」
「エドガー!ごめんなさい。仕事部屋からこの子が見えてつい・・・。」
「迷い猫かな?」
「そうみたいなの。」
そういってリディアは猫を優しく撫でた。
当の猫は我が物顔でリディアの膝の上で寛いでいる。
面白くない、とエドガーは思った。猫相手にと思われたって嫌なものは嫌だ。自分の異常なまでの独占欲なんて当の昔に気づいている。
「リディア、その猫のことはメイドに任せてお茶にしない?」
その欲に気づかれないように、努めて穏やかにリディアから猫をとろうと手をのばすと
「フーッ!!!」
ものすごく威嚇された。
「どうやら君は僕をライバル視しているらしいね。でもダメだよ。リディアは僕の妻だから。」
「フーッ!!!!」
「えっ何?どうしたの??」
「ねぇ、リディアの傍にいたいなら僕に従ってもらわないと。この屋敷の主人は僕だよ」
物凄い威圧的な笑みを猫に向けた。
「さっリディア。お茶にしよう。」
リディアはすっかり怯えきった猫に心の底から同情し、優しい新しい飼い主を探してあげようと心に誓った。
終わり。