伯爵と妖精

□エイプリルフール
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「なぁリディア。明日なんの日か知ってるか??」
ロタが何やら楽しそうに問いかけてきた。
「明日??」
明日はえーっと4月1日だから・・・、
「あっエイプリルフールね。エドガーのためにあるような日ね」
ポールさんとか困らせなければいいんだけどと溜め息をついた。
「そこでだ!!リディア。明日あの嘘つき野郎をギャフンと言わしてやろうぜ。」
「えぇっっ!!無理よ。エドガーよ?」
「だってリディア。会うたび会うたびあいつ人のこと振り回しやがって。たまには懲らしめてやろうぜ!」
「会うたびって・・・それ、ロタにだけじゃ。」
すっかり闘志を燃やしているロタにはリディアの声は届いていなかった。


エイプリルフール当日

「リディア、ポール。これ今日の台本ね。しっかり頼むよ」

「リ、リディアさん。ほんとにやるんですか?」
ポールは既に泣きそうだ。
「まぁ、やるだけ無駄だと思うけど、どうせだしエイプリルフールを楽しみましょうか。」
リディアはイタズラそうに微笑んだ。
「いいぞ!!リディア。その調子だ」
ロタはあいかわらずノリノリだ。
「エドガー、今いいかしら」
「やぁ、リディア。君の方から来てくれるなんてうれしいな。あれっ、ポールもいたのか。どうかしたの??」
「こんにちは伯爵。じっ実は今日は伯爵にお話がありまして・・・」
もう勢いに任せようとポールは気合いをいれた。
「伯爵!!実はリディアさんとお付き合いをすることにしました。」
「っそういうことなの。エドガー。だからこの指輪はあなたに返すわ」
『この設定無理あるわよ』リディアは心の中でロタに毒づいた。






「へぇ」
沈黙を破ったのはエドガーだった。
「カチャ」
それと同時に何かがポールの額に当てられた。
「「エドガーっっ」」「伯爵っっ」
エドガーの思いもよらない行動に隠れて様子を見ていたロタも飛び出してきた。

「ポール。残念だよ。君とはずっと友達でいれると思ったのに。でも僕の婚約者を奪った罪は重いんだ。今日でお別れかと思うと寂しいな。」
エドガーの口調は穏やかだ。しかしゾッとするくらいその表情は冷たい。

「っエド」「せめて苦しまないように逝かせてあげるね」
エドガーはリディアの言葉を遮り淡々と告げる。

「まって、エドガーっ」
「まて、エドガー」
「まってください、伯爵っっ
3人の声が部屋に響いた。




「バーーーンッッ」



3人の願いも虚しく部屋には銃声が響き渡った。




「・・・あれっ生きてる」
ポールは自分の体の感触を確かめるように体を触った。

「さてっロタ。君は本当に単細胞だね。君の考えなんて筒抜けだよ。」

「くそっエドガー、騙しやがったな」

「心外だな。騙そうとしたのは君だろ。しかも随分と悪趣味な設定を考えてくれたね。」エドガーは不機嫌さを隠そうともせずロタを睨んだ。
「あっあの、エドガー。ごめんなさい。ほんの冗談のつもりだったの」
「嘘でも君からそんな言葉聞きたくなかったな。」
「ごめんなさい」
エドガーの傷ついた顔にますますリディアは縮こまる。
「いいんだ。今日1日かけてたっぷり慰めてもらうから。覚悟してね。」

「なっっ」
リディアが反論する隙も与えずエドガーはリディアを抱き抱えポールとロタに「ごゆっくり」とだけ言い残し去っていった。

「はぁ、なんだよ。結局エドガーの思い通りじゃねーか。」
「やっぱりエドガー様には敵わないですね。」
ポールは明らかに疲労困憊している。
そして2人は心の中で「「ご愁傷さま。リディア」さん」
思うのだった。
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