伯爵と妖精
□花の香りに誘われて
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リディアは可愛い。当然欲目などではない。でも僕がいくら可愛いといっても少し照れたよに「そんなこと無いわ」と俯くだけ。
僕がいくら他の男には気を付けてといっても呆れたように「貴方ほど危険な人なんていないわよ」と呟くだけ。僕が何をいっても彼女は自分の魅力に全く気づいてくれない。
彼女は野に咲く花だ。分け隔てなく、平等に蜜を与えるかのように微笑みかける。
当然その花には害虫も寄ってくるわけで・・・
ほらあんな風に・・・
僕が今すぐリディアの元に行けるならものすごい勢いで向かっていただろう。しかし今は令嬢とダンスを踊っている真っ最中だ。流石に放り出して行く訳にもいかず焦れったい気持ちになる。
「こんばんは。リディアさん。」
『くそっ、リディアによるな害虫が。』
「あっスペンサー伯爵。お久しぶりです。」
『あぁっそんな可愛らしい笑顔、男にに向けないでくれっ。』
「リディアさんはいつ見ても可愛らしいですね。」
惚けた瞳でリディアを見つめる。
「っそんなことありません」
『リディアっ、頼むからそんな頬を真っ赤に染めた可愛らしい顔僕以外にしないでくれ。』
「リディアさん。」
スペンサー伯爵は真剣な顔をしてリディアを見つめた。
「あのっ少し庭でお話しませんか?」
「えっ」
リディアは戸惑う。
「いえっ。ただ凄く手の込んだ綺麗な庭だったので、リディアさんもどうかなと思って。」
「あっじゃぁ「リディア。」
エドガーは優しく甘い声を出した。
「エドガー!!」
リディアは驚いたような瞳を僕に向けた。当然か。さっきまでフロアで踊っていた自分が突然目の前に表れたのだから。エドガーは切れている息を気づかれないように必死で隠す。
「あぁ、これはスペンサー伯爵。お久しぶりです。」
エドガーは凄みをきかせた笑顔で男を見つめる。
「・・・アシェンバート伯爵。」
男の顔が少し引きつる。
しばらく2人の微笑み合い(?)が続いた後、スペンサー伯爵は諦めたようにそれじゃまたと軽く挨拶をし去っていった。
「リディア」
エドガーのいつもより低い声に体が強張る。
「あれだけ他の男には気を付けてと言ったじゃないか。」
リディアも黙ってはいない。
「別に貴方が考えるようなことなんて無いわよ。普通にお喋りしてただけなのに。」
するとエドガーは突然リディアの首に噛みつくように口づけた。
「いたっ」
リディアは顔をしかめた。
「なっ何するのよ。」リディアは顔を真っ赤にして慌てふためいていた。
「虫除けだよ。」
「はっ虫?」
リディアは意味がわからないというような瞳でエドガーを見つめる。
「さっリディア。送ってくよ。カールトン教授も心配する。」
エドガーはそういって
リディアを馬車にのせた。
野に咲く綺麗な花があるなら摘み取ってしまえばいい。そしてその花を温室で愛情を注いで育てればいい。虫一匹たりとも入ることができないように。