伯爵と妖精

□距離感
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昔、優しくしてくれた男の子がいた。あたしは浮かれていたのかもしれない。彼との距離を見誤ってしまった。
突き放されたとき不思議と怒りも悲しみもなかった。
ただ距離を間違った自分が恥ずかしかった。

そして私はどうやらまた距離を間違ったらしい。


















エドガーの寂しそうな様子が気にかかり夜中に様子を見に行った。もしかしたら力になれることもあるかもしれないと。
レイブンに部屋に連れてかれものすごい酔っ払ったエドガーと対面した。
最初こそ普通に会話をしていたが途中から妙に扇情的な瞳を向けられ、マズイと思ったが何故かその手を振り払うことが出来なかった。そしてベットに押し倒された。


最近前ほどエドガーのことが嫌じゃない自分がいる。凄く仲間思いで強い心を持っていることとかも知った。
もちろんだからといってエドガーと一線を越えてもいいと思ったわけではない。しかし傷ついているエドガーを無下にあしらうことも出来なかった。
エドガーの顔がどんどん迫ってきてギュっと目を瞑った。

「アーミン」

耳元で聞こえたのはそう呟くエドガーの切なそうな声だった。




体の体温が急速に冷えていくのが分かった。そのせいか頭は妙に冷静だ。
『・・・かえろ』

リディアはエドガーを起こさないようにそっと部屋を抜け出した。
「リディアさん?」

レイブンに突然声をかけられハッとした。

「お帰りになられますか?」

「えぇ。そうするわ。」


レイブンが用意した馬車に乗り家に帰った。部屋に着いてようやく頭が働いてきた。それと同時に涙が出てきた。


「あたしほんとバカみたい。」

エドガーの優しさや過剰なまでのスキンシップに勘違いしてしまったようだ。でも今気づけて良かったのかもしれない。遅かれ早かれエドガーのこと好きになっていたかもしれない。だったら好きになる前で良かった。今ならまだ戻れる。




いつもと同じ時間、いつもの様に伯爵邸を訪れた。
ただいつもと違ったのが妙に焦れた表情のエドガーと玄関ではちあったことだ。

「「!!!!」」

「リっリディア」

「エドガー?今から出掛けるの?」

エドガーは妙に驚いている。

「リディア昨日「もうっエドガー昨日凄く酔っぱらってたわよ。いつもあんなのなの??」
「・・・いやっ昨日は特別。」

「飲みすぎは体に悪いわよ。」

それじゃあと去ろうとしたらエドガーに腕を捕まれた。

「昨日何もなかったの?」

「何もないわよ。」

エドガーはホッとした様にそうかと頷いた。
そんなあからさまに安心しなくても。

「でもリディアから来てくれたなんてうれしかったな。僕も少しは自惚れてもいいってこと?」

「友人として心配だっただけよ。それ以上でもそれ以下でもないわ。」

リディアは足早にその場を去った。
「ねぇ、なんかリディアの様子おかしくない?」

「そうでしょうか。」
「もしかしてやっぱり僕昨日襲っちゃった?」

「それはないと思います。リディアさんは30分も邸にはおられませんでした。」

もし襲ってしまったのならば30分なんかでリディアを離すはずはない。
しかしなんだってあんなに警戒心丸出しなんだ。まるで出会った頃に逆戻りしたみたいだ。冗談じゃない、とエドガーは呟きリディアの仕事部屋に向かった。



リディアは仕事部屋に入り安堵の息をはいた。
「良かった。大丈夫みたい。」
こうやってエドガーに距離を詰められる前に逃げればいいんだわ。そうすればそのうちエドガーも必要以上にスキンシップをとらなくなるわ。
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