伯爵と妖精

□非日常
1ページ/12ページ

ここはシルファンフォードの敷地の一角。新緑の木々が強い日差しを程よい心地の木漏れ日にしてくれているその下でリディアは途方に暮れていた。
「もうっ、こんな広い敷地からどうやって見つけろって言うのよ!!」

「だから妖精の頼み事なんて安請け合いするなって言っただろ」
今まで日当たりの良い木の上でくつろいでいたネコ・・・もとい妖精がいつの間にか隣に来ていたのをリディアは横目で軽く睨んだ。
「元はといえばニコが連れてきたんじゃない」
そうなのだ。元はといえばニコが妖精たちと宴会をしている時に、探し物を手伝って欲しいと相談を持ちかけられ、リディアに相談してみるといい、と胸を張って答えたのだ。その結果リディアはこんなところで四つん這いになり目を凝らして地面を見てるというわけだ。
「い、いやぁ悪かったよリディア。」
ニコは少しだけ申し訳なさそうに下を向いた。
「はぁ、いいわ。どっちにしたってきっとあの妖精をほっとけなかったもの。」
リディアは軽く微笑んだ。
しかしいつまでも長居しているわけにもいかない。屋敷の人に見つかったら大変だと思い、今日は諦めて帰ろうとしたリディアにニコは声をかけた。
「この屋敷のやつに蒼い石を拾わなかったかって直接聞いたらいいじゃねぇか」
「そうしたいけど何て説明するのよ。まさか妖精が勝手にこの敷地に入って石を落としましたとでも言う気?」「まぁ無理か」
とニコは溜め息をついた。もはや妖精が見える人はおろか信じる人も少ない今こんな話はする意味も無かった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ