Novel

□境界
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※軍→英→覚。





「一人は嫌なんだ、」

ひとりは、いやなんだよ。
どこか遠くを見ているような目でそう言った彼に何も言うことが出来なかったのは、きっとその言葉が突然すぎたせいだ、と。
そうやって上手く言葉の出てこない理由を自分の中でうまく誤魔化して、深い青色をした彼の瞳を見る。
そのすぐ後に彼のその綺麗な目に自分は映っていないと気付いても、……そんなことは、きっとどうでもいい事だ。

「……そう、ですか」

結局、返す言葉が見つからないまま曖昧な返事をした自分は、きっと端から見たらとても滑稽に見えるのだろう。
俺のその反応に綺麗なその顔を一瞬だけ、僅かに歪ませた彼は、またすぐに何でもないような顔をして笑う。

「……ごめん、」

どこか諦めたような顔で言われた謝罪の意味なんて、俺には分かる筈もなかったのだけれど。
ただ、その言葉で俺が抱いている思いは叶わないのだと、改めて思い知らされた気がした。
彼が謝る必要は無いし、寧ろ、謝れと言われたらそうするべきは俺の方なのに。

「……スプレンディド、さん」

思わず呼んだ名前に笑って答えた彼か本当に綺麗に見えて、本当に自分は彼の事が好きなのだと自分で自分に呆れて。
英雄ではなく、一人の人間としての彼が見ているのは、「俺」じゃなくてもう一人の、あいつだと言うのに。


(あいつと俺の、   。)





20110731

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