Novel
□うそつき.
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!)鹿軍?
ランピーは、嘘が上手い。
少し間の抜けたような、いかにも嘘が吐けなさそうなその顔で思ってもないような言葉を吐いて、それをいくら疑おうが最終的には信じてしまうような何かが、彼の言葉にはあるのだ。
それにいつも騙される俺を笑う彼に、少し怒りのようなものを感じる事はあるけれど、もう騙されないといくら言っても結局はまた同じ事を繰り返すのだからその言葉はあまり意味をなさない事につい最近気付いた自分は、もしかしたら彼よりも馬鹿なのかもしれない、と少しだけ思った。
「おれね、君の事が大好きなんだ。」
いつもの、何も分かっていないような笑顔で言われた言葉を素直に受け入れる事ができなかったのはきっとそのせいだと自己完結して、また「いつも」のように彼に騙される事を分かっていながら、またひとりで笑うのだ。
「……そうかい、ありがとう。」
「嘘じゃないよ、」
本当だよ。
そう言ってこちらを見る薄青の瞳に、それはもしかしたら本当に嘘ではないのかもしれないと、少しだけそんな事を考えたけれど。
(でも、)
彼が俺の事を好きだなんて、そんなのは嘘だとわざわざ言われなくても分かる事なのだ。
例えばその言葉が事実だとしても、それを信じきる事が出来ないのならそれは嘘とおなじ事だと、もう名前も忘れた誰かに聞いた気がした。
「……ごめんね、」
俺は、君を信じられないんだ。
そんな意味も含めて呟いた謝罪の言葉は、きっと彼には聞こえていない。
そうしてまた俺は、明日も彼の嘘に騙されて笑うのです。
それが正しいことなのかは、誰にもわからない事だけれど。
20110903