小説
□ライオン
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プロローグ
窓から入ってきたかすかな日差し、柔らかな小鳥のさえずりが私の耳をくすぐった。
自然と、部屋の中を見渡す。
そこには、不自然に空いたスペースがあった。そこの部分だけ、フローリングの床が光を失っていない。
長い間、その場所に何かが置いてあったことが分かる。
(この部屋って、こんなに広かったっけ・・・)
ふと、そんなことを思いながら、馴染みのある物たちをダンボールにしまっていく。
(あ、この皿、初めて一緒に選んで買ったやつだ・・・)
ずいぶんと年期の入った、底の深い2つの皿を手に取る。
同時に、オレンジ色の大きなシミが目に付いた。
(そういえばこれ・・・ナポリタンのシミだっけ。ずっとこの皿に入れといたからシミついちゃったんだよね・・・)
蘇る思いを胸にしまいこみ、2つの皿をダンボールに入れ、硬くふたをした。
たくさんあるかと思っていた荷物は、結局ダンボール3つにまとまってしまった。
(意外と少なかったなぁ・・・っていうか、ほとんどあいつの荷物ばっかりじゃん・・・まったく・・・・・・)
いつの間にか、部屋は太陽の光で明るく照らされていた。
眩しさに、目に涙が浮かぶ。
(っっ・・・・・)
なぜか、そのまま表情が崩れた。目の前が、ぼやけて見えない。
(っ・・・・どうしてっっ!!・・っ・・)
声にならない、声をあげた。