小説
□ライオン
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* * *
これは、私がまだ小学生の小さな女の子だったころのお話。
「たーいよーー!あーそーぼーっ!」
太陽の家の前で、私は叫んだ。
しばらくしてから、階段をドタドタとうるさい音を出して下りてくる音がきこえ、太陽が玄関から顔を出した。
「うんっ!!なにしてあそぼっか?ちとせ!」
太陽と私は、家が近くの幼馴染。
小さいころからずっと一緒にいるし、親同士も、すごく仲がいい。
だけど、あまりにも近くにいすぎて、お互いの存在がどれだけ大切かってことを知らないでいた。
「今日はねー!ジャンッ!!!」
首にぶら下げておいた、真新しいデジカメを自慢げに太陽の前に突き出した。
画面が大きく、画質もいい最新式だ。
「えー!すごいっ、すごいね!!」
太陽がいかにもうらめしそうに、デジカメを舐めるように見る。
そんな様子がかわいくて、思わずカメラを構えた。
“パシャッ”
「あっ!なにすんのっっ!!」
「あははwwだって、太陽がかわいいんだもんっ///」
その間にも、私は写真を撮り続ける。
嫌がる太陽。
「っっ・・・僕ばっかりじゃなくって、千歳も撮ろうよっ!」
「・・・いいけど?んじゃあ、一緒に撮ろうよ。」
強引に太陽の肩をつかみ、私の近くへひき寄せた。
「っ・・・うん。いーよ。」
“パシャッ”
ピースした手を大きく前に突き出して笑う私。
そして、少し恥ずかしそうに肩をすくめて笑う太陽。
それが、最初で最後の私たちの写真。