Inzm長編

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「そういえば最近元気ないな成神」
「そう、ですか?」
「ああ。顔暗いから」



 顔、暗いって辺見サンにも言われたけどそんなに?
 ていうかなんで暗くなっちゃうわけ
 自分でもわかんない




「それに、咲山といないしな。喧嘩でもしたのか?」
「っ、まあ、はい」



 なんなのこの人
 確信犯?それとも本当に天然?
 多分後者だよな
 人柄的にね



「....何か俺したかお前に」
「え?」
「さっきから返事そっけないし、目合わせてくれないし」
「・・・」




 狭い傘の中
 窮屈な体と思い
 なんで窮屈なんだろ。今吐き出せばいいのに
 どうして吐き出せないんだろ。出かけているのに




「別に、なんでもないです」
「嘘つくの下手だな成神」




 にこり、と微笑むながら覗き込む先輩
 ....負けるにきまってるじゃん
 目の奥がじんわりと暖かくなる




「気持ち、落ち着いたら、話します。すいません。あと、俺ん家ここなんで」
「ああ、わかったよ。じゃあな」




 先輩が去った瞬間、涙がこぼれた
 本当は気づいてたんだ
 もう俺には、勝ち目なんてないんだって





 思っている年数とか時間とか関係ない
 それは相手が決めることだから





「ああもうすべてが嫌だ」




 雨で濡れた体を震わせながら、家に入った
 そして携帯でメールを出した、ある人に
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