Inzm長編

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 朝のHR終了間際
 担任が今日の伝達を手短に話す




 「〜でまた暴力団とみられる者達が脅しをしたそうなので気をつけるように!!」
 最後はそう言い、慌しく教室から出て行った
 おそらく次の授業が遠くの三年生棟であるのだろう

 


 「え、起立っ!」
 学級委員の号令で起立したとき、
 教室の戸を乱暴に開け入ってきた男子生徒がいた
 

 



 「咲山!!また遅刻か!」
 三年生棟へ向かっているためか、廊下から聞こえてきた怒声
 いつも遅刻をしてくるため、誰か推測がついていた
 でも今日はいつもと違う

 

 「どうして傷だらけなんだ?」
 誰かが咲山に訪ねた
 よく見ると咲山の腕、顔には痛々しい傷跡があった。さらに制服は血まみれだった

 



 「・・・喧嘩」
 その言葉で教室がざわめいた




 「咲山って暴力団のリーダーらしいぜ?」
 「咲山君は何百人の人を病院送りにしたんだって」
 あちこちで似たような内容の噂をしている

 


 
 「源田、どうする?止めるか?」
 佐久間が聞いてきた。確かに本当に目撃したことを言っているようではない。これでは咲山が困るだけだ

 


 「よし、止めるか」
 椅子から立ち上がり、止めようとしたときだった

 



 バタンッ

 


 何かが落ちた
 その物音の正体は咲山だった
 ざわめいていた教室がさらにざわめきだした


 「源田、俺はここ静めておくから保健室へ連れてけ!」
 「ああ、」
 俺は急いで保健室へ連れて行った








 保健室へ行くと誰もいなかった
 とりあえず寝かしておこう
 咲山を慎重にベットに下ろした

 



 (咲山どうしたんだろう・・・)
 そう考えふけていると、咲山がゆっくり目を開けた

 



 「・・・ん?」
 「体調はどうだ?」
 「・・・体全体が痛い」
 「そうか。・・・なぁ、なにがあったんだ?」

 

 少し間が空く
 話したくないのなら、話さなくてもいい
 そういい忘れていたことに気付いた
 

 
 「・・・人助け」
 「え?」



 ゆっくり咲山の口が開いた
 そしてそこから事実が出てきた




 学校へ行こうとしていたとき、
 脅されていたやつが居たこと


 そいつを庇うため、喧嘩へ発展したこと

 喧嘩をした後、被害者がぜひお礼をさせてくださいと言われ、そいつの家へ連れて行かれたこと

 とりあえず、人助けをしていたらしい





 皆が言う咲山とは全然違うな
 クスリと思わず笑ってしまう

 人は見かけによらない
 まさにそのとおり



 優しいんだ、本当は





 この日からあまり喋っていなかったが、咲山と少しずつ言葉を交わすようになった

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