Inzm長編

□07
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 ねぇ、どうして?



 

 「成神、ちょっといいか?」
 あの日から数日後、咲山先輩が教室に来た
 同級生達はおびえている
 それもそうだ、先輩はいろんな面で有名
 でも実は頼りがいがあったりする・・・なんて
 思っても死んでも言わない

 




 「何ですかー?」
 何事もなかったのように振舞う
 「・・・屋上来い」
 ・・・うわ、バレてる?
 でも先輩意外と鈍感なんだけどねえ


 


 「・・・なぁ」
 ガンッと鈍い音
 それは先輩が俺を壁に押し付けた音
 「お前、源田と会ったよな?」
 「そりゃ毎日部活で会ってますけど?」



 「・・・個人的に一回会ったよな?」
 「いいえ、そんなことありませんよ」




 「・・・お前見たやつ居るけど、?」
 「そうですか。バレちゃいましたか」
 素直に認める
 ここで異論を唱えたってこの人には通用しないから



 「俺ですよ。おみごとです」
 「!何でそんなことしたんだッッ!」
 憤る先輩、久しぶりに見た
 生で、しかも正面で見ると迫力あるなあなんて、呑気に構える



 「知ったとこで先輩どうするんですか?」
 「そ、れは!」


 源田先輩のことしかこの人考えてないんだろうなあと思うと、すごく憎くなって、
 本気でやればよかったと後悔


 あの時一瞬、ほんの一瞬気が緩んだから
 だからこんな結果なんだろう、って気付いているのに
 気付いていないふりをする自分


 ああ、醜い



 「・・・もう関わりませんから、源田先輩と」
 「は?お前何言ってんだ?」



 「叶わない恋を抱いたってツライだけですよ、先輩」


 目を見開く先輩
 気付いていない、って思っていたんでしょうけど
 


 「男同士、ですよ?」




 俺の最後の手段、そうそれは、





 叶わないことだと言う事
 ただそれだけだった


 

 「・・・失礼します」




 俺が振られるなんてわかってる




 なら、せめて、




 あの人と結ばれないように仕組む




 それが自分を慰める手段だった





 これは源田先輩の幸せを壊すため、
 そう自分に言い聞かせた

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