妖は大空を匿う

□リクオの企み
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イタリア某所。
そこにはボンゴレの本拠地がある。

「九代目!獄寺隼人から電話です!」
家光は慌てるように九代目の部屋に入っていた。
「家光、電話を」
「はい!」
家光は電話を九代目に渡し彼の隣に立つ。

「なんだね?」
『九代目、お忙しい時間に申し訳ございません。実は初代のお知り合いに“奴良”とつく方を存じておりますか?』
「獄寺君!君なんでその名前を」
『ご存知でしたか…。実はその孫が沢田綱吉側にいまして……。』
「綱吉くんの味方だというのか!奴良組は!獄寺君!そのお孫さんの名前は!?」
『(奴良組…?)奴良リクオ、学年は俺らと同じです』
「そうか…。奴良組とは初代以外関わりがないし少ない文献に残っていて君らで関係を築いてほしかったが…仕方あるまい」
ハァ、とため息をつき自分を落ち着かせる九代目。
『……奴良リクオと代わりますか?本人が九代目と話したいらしいです。日本語になりますが』
「あぁ…問題ないよ。彼は日本人だしね」
『分かりました。……奴良、九代目だ』
静かにリクオを呼ぶ声が電話越しから聞こえる。
『分かった。感謝するよ。ボンゴレ九代目ですね。僕は奴良組三代目奴良リクオです』
獄寺への感謝と九代目への挨拶。
「あぁ…君が。奴良君。君はなぜ綱吉君を庇うんだね?」
『なぜツナを庇う?大切な仲間で家族だからですよ。当たり前でしょう?仲間を家族を守るために力無き者を守るのが奴良組です。守るために組を築き、家紋を受け継ぐんだ。血なんて関係ない。組に招き入れ仲間と家族となった者達を守る。ただそれだけです。あとツナは友達です。友達を信じて守るのが人ってもんでしょう。それに信頼してますから』
信頼、仲間、家族、友達、だから守る、庇う。
それが当たり前だ。というリクオはどこか綱吉と同じ理念を持っている。
「……そうか…。奴良組の三代目も堕ちたものだね」
『それはこちらの台詞です。祖父からボンゴレ初代の話を聞きましたが、全く違って残念だ。それに、僕は見たものしか信じない主義ですから…。僕が見たのはツナが並森中生に暴行をされていた所ですよ?ツナが苛められてるのが確かにわかるじゃないですか。ボロボロで痩せこけた姿ですよ。母親の虐待の痕もありました。医師(鴆)に見て貰ったので確かですし診断書もありますから証拠提出も出来ますよ。それに奴良組のシマにあなた達が踏み入れば確実にボンゴレが不利ですよ?』
クスクスと不適に笑うリクオの声は組長そのもの。
殺気を含む声は電話越しからでも伝わる。
ブルッと思わず身震いをしてしまう。
中学生が出す殺気出はない。
ボスとしての素質がある。
組を纏めるのが中学生の子供だ。
堕ちたものじゃない。
12歳から正式に三代目候補となり、周りに認めてもらう様に努力をして、自分で自分の百鬼夜行を作る。
四国妖怪や京妖怪と言った勢力を伸ばしていた強いとこと死闘をして力を示した。
遠野で認めて貰い、奴良組の古株達にも何だかんだで認められ、13歳の誕生日に組を継いだ。
それからも奔走をし手探りと側近や組の仲間達を信じ貫いてきた道。
九代目は知らないのだ。
奴良組がどんな存在か。
闇で生きてきた妖達を敵に回したことを。
同じ組織を纏めてる同等の相手を見下しているのだ。
「若いのが組織を纏めるのは力、実績が必要だろ?力になるよ」
『要りませんよ。マフィアの助けなんて。力と実績?若頭の時に既に得ましたよ。衰退化した組を再興させてる途中でもありますがね。既に組は纏まってます』
今のボンゴレなんかと手を組むなどあり得ない。と突き返す。
「なっ!!ボンゴレの誘いを断るとは…」
『海外なんかと交戦なんて無いですから。我々の戦いにはあなた達は不必要、足手まといです』
キッパリと告げる言葉に迷いはない。
まだ名が知れてないかもしれないがそれでも構わないのだ。
これからつかめばいい。
修羅場を潜り抜け古株も認めざる得ないのだから。
力で押さえて圧縮させるのではない。
力で示すのだ。
自分の強さ、覚悟、想いを全てを伝えるのだ。
これからでも遅くない。
妖怪との戦いに人間は不用なのだからいくら天下のボンゴレでも足手まといとなる。
それを知らない九代目は苛立ちを覚えた。

『そんな言い方はないだろう、と思っていらっしゃるかと思いますが事実を告げたまでだ。…任侠一家なめてもらっちゃぁ困ります。』
リクオの声が1トーン下がると教室や異国までその場の空気が変わった。
「中学生が…何を言っている…」
『九代目、貴方はその中学生にマフィアの将来を預けることになる。中学生に人殺しをやせてる奴はアンタだろ?真実を知らねぇアンタらに奴良組に入ったツナを渡すわけねぇ!覚えておけ、ウチのモンにちょっかい出したらただじゃぁおかないってことを』
夜のリクオがその場にいるような錯覚を覚える氷麗と綱吉。
九代目も今誰と話しているのか分からなくなった。
口調や声が変わり、別人がいるような…。
「君は誰だい…?」
思わず聞いてしまう疑問。

『奴良組三代目組長奴良リクオ』

凛とした迷いのない言葉に九代目は後継者である人物に不安を抱いた。

まだ、綱吉の方が…迷いはあったもののボスの素質がある。
己の力を認めればもっと成長する。
凛として…ボンゴレを引っ張ってくれる。

だが綱吉は罪人だ。

「奴良組三代目、覚えておこう…」
『九代目が道を誤ったら下の奴等が路頭に迷う。それを肝に命じて後継者をハッキリしたらその後継者を僕が潰しますよ…。ボンゴレも解体しようかな?』
「…構わんよ…若造がいきがるな…」

温厚な九代目からの殺気。
リクオが怒らせたのは間違いないが、その場にいた家光でさえ向けられていたいと分かってなくても恐怖した。


『ご老体が無理をしても死に急ぐだけですよ…では獄寺隼人に変わります』


リクオが馬鹿にした口調と言うと反論する前に獄寺へと携帯を戻された。


『九代目、失礼します』

「あぁ…」
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