短編

□Prologue-02
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 遠くでカチャカチャと、金属製の鎧が鳴るのがわかる。

 メタトロニオス王国の宗教軍だ。

 メタトロニオス王国はオルフィス教を国教にしている。
 オルフィス教を守るため、という名目で結成されたのがこの宗教軍だ。

 だが近年、オルフィス教信者が増えたことでオルフィス教自体が強力な権力を持ち始め、宗教軍を我が物として使うようになったのだ。

 話し声が聞こえるほど近付いてきた。

「―――命に捧げられし癒し、彼の者を救済せよ…」

 自身に"癒"属性の術をかける。
 腹部の辺りや、他の切り傷にも温かな光が溢れる。

 涙の信託者(オルクル)は高い自己再生能力により、傷病を一般の人の数倍の早さで回復させる。
 だがそれは数日、数時間の話で、一瞬で、とはいかない。
 すぐに傷を癒したいときは術を使って治すしかない。
 それに銀髪の少年、シロガネは。

「おい!例の『涙の偽創者(レオルフィー)』がいたぞ!!」

 赤と青をバランスよく配置した軍服を着たものが、シロガネを指差す。

 思わず、早すぎだって、と呟いてしまう。

 左手を突き出し、炎の塊を手の平から出現させる。
 手首で軽く弾くように火の玉を飛ばす。

 それは一直線にスピードをあげながら、シロガネを見つけた宗教軍兵の顔面に激突する。
 悲鳴のような叫びを背に、シロガネは駆け出した。

 様々なの属性を駆使し、時に跳ね、時に姿を消し、時に時を止めた。だが魔力(ルナート)を多量に持つシロガネといえど、特に時空属性はあまり多用出来ない。
 人気の少ない路地に入り、周囲を確認して天蓋越しに空を仰ぐ。

 もうこの都市に用はない。
 地面のかわりに透明な板が水の上を敷き詰める、水上都市ハルワタートを出ることにした。

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