短編
□夢と希望と不安のあの頃
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「と、とにかく、今後そういうこと気をつけていけばまだ大丈夫だと思うよ!貴族っていっても色んな人がいるからさ!」
「だとしたら俺は確実に貴族の中でも最低なヤツ当てた気がします」
「え?」
僕はキョトンとして聞き返す。
「つまりはそういうヤツです。挨拶からして上から目線で、俺様は〜俺様は〜って言ってまして…本気で来いと言われたので、本気でやってしまいました」
ガクッと肩を落とすリシアース君を、上手く慰める言葉が見つからなかった。
見たことないけど容易に想像出来た。それは確かに、貧乏クジだ。
しばらくベンチに座って学校生活について話していると、リシアース君は義務学校時代よりは楽しくやっているようだ。
寮生の子に男と間違われたり、新しく出来た友達に昨日まで男性と思われていたりと、相変わらず外見のコンプレックスについては酷いものだ。
「性別なんてあまり関係ないと思うんですけどねぇ」
軍学校に入学してくる女性というのは大体男勝りが多い。腕っ節に自信があり、体力も男性についていける程だ。
だけどそれはあくまで男勝りだ。男性のようではあるけれども男性ではない。
その点リシアース君は、酷い話だけどまさしく男性的だ。
恋愛に興味を示さない。甘いものも好きじゃない。大体の行動は大ざっぱ。一人称は俺だし、逆に女性らしさを見つける所が大変なくらいだ。僕が知ってる限り、胸の小ささを気にしているらしい。
「時々男装しているのかとか言われますけど、そんなつもりはないんですけどね」
「なら、少しは女の子らしさを気をつけてみたら…?」
「面倒臭いです」
軍学校の制服がもう少し男女の差別化を図ってくれれば、そんなこともないんだろうなと思う。
制服は青が基調の上着だけで後は個人でお任せだったりする。式や祭典などに着る指定のズボンや長袖の服があるが、それらを普段から着用している人は少ない。
ヘメラが沈みかけ、そろそろ寮に戻ろうか、と立ち上がると誰かが何かを叫ぶ声が聞こえた。
もっとも、上手く聞き取れなくて叫ぶように聞こえただけであるが。
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