短編
□魔鉱維新
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団員たちの結束力は強い。異国で何度もテロリストたちに狙われているうちに、信頼や助け合いを学んだようだ。怪我に備え、包帯や消毒液などを備蓄するようになり、それらを分け与えている。
ただ一人、それを不要としている者以外は。
ウィズは腫れ上がった頬を余所に、バリバリとシュガーソースを噛み砕く。少し動けば、背や腰を痛めている。
どうやら倒れた時の当たりどころが悪かったらしい。個室の椅子に腰掛けながら、ウィズは飲み込んだ。
今日のニールは機嫌が最悪だった。魔力石を不正に入手し、それを他の団員が目撃して噂がたちまち広まったのだ。
仕方なしに入手ルートを調査し、ニールが不正を働いたという証拠を持っていったらこのザマだ。
「アイツらのせいで、一体何人の団員が連れ去られた!何人の若い希望が失われた!俺たちは、あのくそ食らえなテロリストどもに、報復をしなければならないんだよ!!」
ニールは元々、仲間意識が強く、結成された当初でも、よそよそしい空気をすぐに掻き消した。自分以外に、だが。
どうやらテロリズムの一件以来、更に涙の信託者への偏見を強めているようで、ウィズへの態度も厳しいものになってきている。
内に熱いものを秘めた冷静な男だと思っていたのだが、今では見る影もないほど、疲弊と焦りを募らせている。
少しでも話を聞いてくれたらいいのだが、と思わざるを得ない。最近では全く聞く耳を持たないのだ。
ヘメラが赤く染まる頃、石造りのこの街でまた夜が訪れようとする。通路で、今日は何を食べようか、などという団員の明るい声が聞こえる。自分が行っても、場の空気を悪くするだけだ。それに、空腹は感じていない。
その代わり、体が重い。恐らく、怪我のせいだろう。普段は寝ないのだが、この様子ならきっと熟睡してくれるだろう。
歯を磨いて、コートを縛ってた紐をといて、それらを脱ぐとフックにかける。風呂は、寝て傷が癒えてからでいいだろう。七分丈で袖が広口シャツのまま、ベッドに転がり込む。
頭に固いものが当たり、外し忘れていたゴーグルを取っては脇に乱雑に置いておく。布団で体を覆い、目を瞑ればすぐ暗闇が目の前を包む。