短編
□魔鉱維新
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その日はよく寝てしまった。今思えば、本当に馬鹿みたいによく寝ていた。
目が覚めたのは、爆発音とか、ドアを蹴り飛ばされたような音ではなく、誰かからまた殴られた時だった。
「おい、起きろ!」
痛みに歯を食い縛りながら、半目で目の前の状況を確認する。外の赤い照り返しを受け、一様に白い服を着た人が、六人もいる。
記憶にないその人物達を見る。その白い服にくすんだ赤や黒い赤などを跳ねさせたように付着させている。
「おい、起きてんだろ?あぁ?」
ウィズの居たベッドは丁度窓辺から外れ、暗がりになっていたため、こちらの動きが読めていないようだ。
「あぁ、もう面倒くさい。リーダーかどうかの確認なんていいじゃないか、もう。連れてけばどうせみんな、同じ黒い皮膚の連中だよ」
殴ってきたとは別の、長身の男がウィズに近付いてくる。手に持っていた注射器で大方何をされるか察し、聞こえない程度に詠唱を唱える。
「はーい、はーい、はーい。そのまま動かないでねー。変なとこ刺して殺しちゃうかも…ってわぁ!!」
男は足下をすくわれたように突然に床に叩きつけられる。恐怖に足を見れば、床から黒い穴がぽっかりと空き、黒い手が男の足に絡み付いている。
「コイツ…!やっぱりサンダルから来てるリーダーの涙の信託者だ!!」
ウィズは起き上がって、更に詠唱を唱える。
「――暗黙の心情、開口するは万人の持つ終焉の目」
「うっせぇ!とっとと黙れ!!」
先程殴ってきた男が、今度はウィズの頭を狙って殴った。視界がぐらりと揺れ、更に壁に頭を打ち付ける。意識が遠退き始め、ウィズは呻き声を上げる。
「たく、手間かけさせやがって」
「でも、能力自体は大したことないわね。ちんけな闇属性しか使えないっぽい?」
白いフードを深くまで被った背の低い女が、先程注射器を持っていた男を立ち上がらせながら言う。
「ホントホントホント、ただの雑魚だねぇ」
立ち上がった男は喧しい笑い声をあげて言う。