短編

□魔鉱維新
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 あぁ、本当。雑魚でよく殴られたりした甲斐があったかもしれない。
 こういうのは慣れた。

「――汝の本質に注ぐ。恐怖の(しるべ)を!」

 ウィズは詠唱を終えると、術を発動する。次は一人ではない。六人まとめてだ。人の顔にも見える紫模様の霧は白い集団をまとめて囲み、覆い尽くす。

「な、な、な何だよこれ、何だよこれええぁぁあああ!!!」

 皆、頭を抱え、狂ったように悲鳴を上げる。
 あるものは床に頭を叩きつけ、あるものは窓から飛び降り、あるものは自身の首を絞め、あるものは戸を飛び出しては走り去っていった。残り二人は互いに引っ掻き合い、さながら猫の喧嘩をしているようだった。

 今のうちに、とウィズ立ち上がるも、グラグラと視界が揺れ、酷い吐き気を感じ、またベッドに倒れこんだ。先程、頭を殴られたのが良くなかったのだろう。
 深い呼吸を繰り返し、まだか、回復はまだか、と一心に唱える。

 せめて、何か自分の身を守れそうなものをと、ベッドの隣の、机の棚に手を伸ばす。引けば、まだ未完成のままだった魔晶器(ましょうき)魔裂器(まれつき)の複合機が現れる。
 幾分かはテストはしたのだが、最終調整中で、導線や変換器、矢の出力部など、あらゆるものが機器の中の収まっていない。

 その中で一つ、鋭利なものが光る。忍ばせておくのに便利と聞いて買ったが、結局は使わなかった短剣(スティレット)だ。
 刺突に向くため、使わないならワイヤー繋ぎにして飛ばしたらどうかと考え、複合機の一部にしていたのだ。

 そのスティレットを引っ張ると、柄の部分に御丁寧にしっかりと、途中短剣だけが飛んでいかないようにと工夫を凝らしてワイヤーが括り付けられている。今の状況では、傍迷惑でしかないのだが。
 更にスティレットを引き、そのワイヤー部分を切りつける。何度かやってワイヤーは切れ、ウィズの手元に収まった。
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