本編
□白銀の自称旅人
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「――…えっと…この国の王女に会わせろだあ?」
「あぁ。あの城に住んでんだろ?」
長く、白い髪を揺らして少年はメタトロニオス王国の王都エノクの中で最も高い建物を指差した。
メタトロニオス王国は名の通り王制で、全ての頂点に君臨するのは王である。そしてこの都にその権力を見せつけるかのように、城は天高くそびえ、エノク一高い建物になった。
そう。彼の指差した先は、国王の娘である王女も住む城だ。
リシアは気が抜けて剣の柄から手を離すが、相手は武器も構えることも、術を唱えることもなかった。
「質問してもいいか?」
「あぁ。ただし、何故王女に会いたがっているかは受け付けない」
「………」
一番に聞きたかった事を、言わずにして拒否された。何か言わないのも何なので、本音を漏らした。
「お前は変態か?」
「は!?」
「いきなりそう言うことを言いだすなんて…王女を崇めたい女好きな変態かと思うんだが……」
「ちげえよ!こっちにも用事ってのがあるんだよ!!」
怒声を響かせ、彼は言った。
リシアも彼をアルバに会わせるという用事がある。彼も王女に会わなければならない用事がある。その理由は互いに話さない、話せない。
自分に至っては用事の内容すら話してないのだ。
仕方ないといえばそうなのだが、ますます彼が怪しく見えてくる。
「…どうやって会うつもりなんだよ。まさか入り口から強行突破?」
「そんな目立つことが出来るかよ…術を使って内部から強行突破だ」
「結局強行突破かよ!」
結構考えているようで考えていないやつなんだな、と思った。
「城内から強行突破…"時空"の能力を使うにしても、普通なら、一度城の中に入ってからじゃないと」
「そう。だから二人必要なんだ。城の中に入れるような一般人を」
「…で、それが俺か」