本編
□慈悲なかれ
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「どちらの味方?」
当然、シロガネの味方だ、と言おうとしたのだが言葉は寸前の所で詰まった。
シロガネだって、魔力(ルナート)を視るだけとは言ってはいるが、本当にそれだけなのか。
視た後、何をするつもりかは話してない。ましては、オルフィス教に追われているような人物だ。一体何をして教団から追われているのか。謎が多く、そして怪しい。
今、自分はアルバ側についているのかもしれない。と、リシアは思った。元々、アルバに頼まれてシロガネのそばに、ものの数時間ではあるがいたのだ。
人に笑顔で優しく接し、身元もハッキリしている彼は、今の現状に目を瞑れば信頼できる人物であろう。
だが、アルバ側についたところで、ユーキが助かる訳ではない。それより、何故二人してユーキが必要なのだろうか?
勝手に困惑して、質問攻めをしたくなる。いや、これが何か悪いことなのだろうか。リシアにとって、知らないことは恐怖だ。
こんな限られた条件の中で答えが出るわけでもなく。しかし、剣を抜きながら意見を述べた。
「少なくても、俺は俺の友人を攫うようなやつを見過ごすつもりはないです。アルバさんがユーキをーー…しかもどこに、何をするつもりか、なんで連れ去るのかも分からないのに、そちらにつくとか、自分で納得出来るわけねえし」
アルバが押さえ気味に、けれど声に出して笑い出した。
「敬語、崩れていますよ」
「それは元々だし、…苦手何ですよね。目上の人には極力丁寧に話せとは言われたんですけど」
「彼につかなくてもよろしいのですか?」
全くもって直球だ。
「どちらか、それだけの選択肢ってのもおかしいのに、選択するには俺にとって知りたい情報が少なすぎるんですよ」
だからリシアはシロガネと同じように、右の剣先をアルバに向けた。
「だから、選ばない。自分のやりたいようにやるんです」
「なんだそれ。素直に俺につくとか言えばいいのに」
シロガネが呆れたような、冗談混じりで言った。リシアはムッとして言い返した。
「さっきも言ったろ?選択するには情報が少ないって。お前もアルバさんも、重要な所を話してくれやしないんだから」
だからといって、無理やり話させるのも好かない。そう付け加えた。そうか。とシロガネも呟く。
アルバは、やれやれ、と言うように両腕を左右に開き、結局リシアースさんも敵ですか、と言う。
「私はこう見えて忙しいのですよ。お二人相手は…少々面倒なのですが!」
そう言ったあとに、シロガネは、目を庇え!と叫んだ。
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