本編
□愚か者こそ旅させよ
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「アルバさんがどこに行ったのかお前は分かるのか?」
追いかけると言ったシロガネに、そうリシアは訪ねると彼は大体は、と答えた。
「奴はオルフィス教の聖職者なんだ。なら、行き先は聖地!」
「オルフィス教聖地…オリエル…?」
「そうさ。それ以外、何がある」
「何が目的だったのか、俺にはサッパリなんだが…本当にそこって言い切れるのか?」
「言い切れる。断言出来るね」
一体その自信はどこから来るのか分からないが、シロガネは堂々と胸を張って言った。
古井戸の桶を元あった場所に戻し、彼は言った。
「で、お前はどうする?アルバに言われて俺を連れてこいって言われたからついて来てたんだろ?」
シロガネが言う。リシアは皮肉ったような笑みを浮かべて答える。
「その通り。まさか会えるとは思わなかったし、そっちから条件引っ下げてやってくるなんてな」
「そうだな…時空属性なんて使えるヤツ、滅多にいないからおまわず釣られっちまったよ」
シロガネは呆れたように言うと、リシアは冗談混じりに言う。
「釣られて三枚卸にされなくてよかったな」
「俺的には大物を先に釣られた気分だ…」
「でも、結果的にユーキは見られただろ?」
あぁ、と頷きながらシロガネは言った。
狭い路地を抜け、メタトロニオス王国軍の連中がいないことを確認してから通りに出る。
だが未だにスラム街が続いているらしく、金銭や物乞いをされた。始めはその汚さに軽蔑してしまったものの、その軽蔑がいかに自分の器が小さいかを思い知った。
彼らだってこんな生活を望んだ訳ではないのだ。どうしようもなくて、誰かに縋るしか道がなくて。
それでいて一人を助ければ飢えた獣のように群がる。ただの一般人…ましてや学生が安全に出来ることなんて無いに等しい。
そんなスラム街の人を気にも留めず、悠々とした態度でシロガネは言った。
「けど、連れ去られたんだったら意味がない」
「そうなのか?」
「最悪、死ぬかもしれないしさ」
「な!?」
腹の底から、叫ぶようにリシアは言った。まさかユーキが殺されるのだろうか。
思わず襟元を掴みシロガネに言った。
「なんでだ!なんでユーキが!」
「ん?は?あ…そこまで知らねえよ!」
困惑したシロガネを見て掴んだ手を話した。何をしているのだ自分は。脳裏にあの日の出来事がフラッシュバックする。
シロガネだってもしかしたらユーキを守ろうとしての行動だったのかもしれない。
リシアは手を離しながら言う。
「わ…悪い」
「いや、別にいいけどよ」
と、喉元をさすりながら言うシロガネを見て更に申し訳なくなる。短気な行動は後に心を抉るのだ。
「で、だからどうするよ。お前だったら、俺は歓迎するぜ」
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