本編

□愚か者こそ旅させよ
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「は?何が?」

 言っている意味が分からず、リシアはそう返した。
 シロガネは左手で頭を掻きながら、お前って結構人の話聞かないタイプ?と言うのを聞いても更に答えにたどり着かない回路が増えるだけだ。

「ようは一緒にアルバを追いかけるかって話だ。お前だったら戦力になるし、魔力(ルナート)だってはすごく使えるしな」
「あぁ!あ…」

 ようやく理解出来た。だがそれは重大な問題を孕んでいる。

「オリエルに行くんだったら最短ルートはここエノクの港行って船だろ?そうじゃなくても水上都市ハルワタートに行って船…旅じゃんか!!」

 旅だ。軍学校にいた時、遠征訓練で各地を歩いたが大変という言葉が2乗の3乗されても足りない。
 足は疲れるし魔物もでる。思うように剣が振れずに魔物に噛みつかれたこともあった。船に乗ったことはないのだが事故で沈んだというのを何度か耳にしたことがある。

「あぁ、その通りだけどよ…」

 シロガネがリシアの顔を見る。恐らく、困惑した表情の自分が特異な青い目に映っているだろう。

 旅に出るということは、家を空けることだ。弟のエンは後々軍学校の寮に入るだろうし、そうなると妹のレシアは一人ぼっちになる。
 母は幼い頃に死去し、父は軍人でそう滅多に帰ってこない。
 だがレシアだってそう幼い訳ではない。一人でも、周りの友人と井戸端会議を決行するだろうし…そうだ、学校はどうなる。

 折角入れてもらったが気ままに通い、だが雰囲気や学べる学問や教授は非常に気に入っている国立学校を、まさか退学か休学しなければならないのではないのか…!

「…しばらく考えるか?」

 シロガネの提案に、ただ頷くしかなかった。

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