本編
□旅は道連れ世は情け
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「くらえっ」
白い上着がたなびいてリシアは両手に持った剣による突きを連続に行い、最後に右足で双葉の出た種のような敵を一蹴する。
返り血のように、透明だが粘着性のある体液を全身に浴び、その患部から酷い熱を感じる。
「熱っ!?」
「馬鹿っそいつの中身は毒だぞ!慎重に攻撃しろよ!!」
唱えていた攻撃術の詠唱を止め、シロガネは癒属性の術に切り替える。
「―――浄化せよ彼の者の邪、癒の光にて御霊の洗礼を!」
術が完了するとリシアに温かな光が包み込み、痛みをとる。
先程倒したのとは別の同種が、種から出た根を巧みに使いながら前進してきたので咄嗟に後方に飛ぶ。敵はそれに動じず前に進むのを止めなかった。好機だろう。
炎属性の魔力を剣に込める。振るって飛び道具のように火の玉が敵に向かう。見事に命中し、魔物は炭となった。
「あと三体だ!」
リシアは言う。それよりも前に、シロガネはもう一つ術を唱え終えていた。
「―――焼き尽くせ炎天、慈悲なき猛火を汝に!」
一カ所に集まっていた敵の足下に魔法陣が浮かぶ。少し遅れてその上にも赤く輝く円陣が浮かび、陽炎のように淡く、それでいて確かな熱を持った揺らぐ炎が天を目指して燃え上がる。
敵は甲高い断末魔を上げ、高温の為か炭も砕け散って消えた。
「よし、終わり」
シロガネは一度長い銀髪を払い、左手を腰につける。
リシアも両手に持った剣を右腰の鞘にしまい、腕組みをして空を仰ぐ。
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