本編
□パンを分け与えよ
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食事を終えると、ヘメラの全身が見えるほどの高さにまで上がってきた。辺りに闇はなく、皮膚や目から恒星の力を強く感じる。
シロガネは、闇はその場にあるだけだ、と言ったがそれでは光は何だろうか。闇を打ち払わんとする侵略者だろうか。闇を悪とし、正義の名の下に光が神の恩恵を受け、大衆を率いて抵抗しない悪を駆逐する。
普段は自然と光を崇めているのに、そう考えると不思議な心境になる。
「リシアおねえさん…その地面に書いてあるの、何?」
カルスが尋ねる。
「ただの計算問題。そこにあるのが波の速さのを求めた式で、ここが波の強さを求めた式」
「波って海の?」
手首を使ってカルスは波を表現する。それに対し、リシアは指で宙に波を描く。
「この問題は音の波。波動ともいうらしい」
「音が波?」
「そう。物体や空気を振動させて伝わるもの。その振動が波」
「う、うーん…いまいちわからないや……」
「俺も物理はそこまで得意じゃないんだ…説明下手でごめんな」
確かに、いきなり音は波だ、と言われてもいまいちピンと来ないだろう。そもそも、波というイメージが湧かないのかもしれない。
静止した水溜まりが近くにあれば、波というのは周りを振動させるもの、という説明が出来そうなのだがそう手元にあるわけでもない。
「光が粒子でもあり、波でもあるっていう話は聞いたことあるよ」
「なんで逆にそっちを知ってるんだ」
「意味はよくわからないけどね…」
カルスは少し俯きながら言う。