本編

□大地と生きる村
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「そうなのか」

 一回も来たことのないリシアは、その以前のマバルアと比較が出来ないのでとりあえず言う。

「だから、何か異常があったんじゃないかって思ってさ」
「異常ねぇ…その『核』の状態はどうなんだ?」
「案の定、暴走してる」

 シロガネの口から、いつもと変わらない口調で出たその言葉にリシアは盛大に驚いた。

「暴走してるのかよ!」
「初めて見たんだけどよ、マバルアの核」
「何でそれなら暴走ってわかんだよ!!」
「とにかく、もう尋常じゃないって感じで…周期的に出る固有のシグナルも無茶苦茶。陽魔力(フルナート)優勢ではあったけど陰魔力(ニューナート)が完全に打ち消されてる」
「マジかよ…」

 リシアはマバルアの主幹を直視する。木の皮は粗々しく、触ってしまえば落ちそうな、しかし手が傷ついてしまいそうな、年老いた木独特の風格がある。
 だが、それしか分からない。シロガネの言う、属性を構成する、一般的に魔力と言われるそのものの対の粒子は見えるはずもなかった。

 マバルアが魔力を持ち、暴走してる?
 目の前で起きている現象なはずなのに、全く理解できない。全く見えない。
 最も、それが本当かどうかも分からない。それが歯がゆく、リシアは眉に皺を寄せた。

「何か対策法はあるのか?」

 リシアはシロガネに尋ねる。シロガネにしか分からない以上、シロガネにも何か考えがあるのだろう。

「……ないな」

 忘れてた。シロガネは物事を深く考えない人間だ。
 異常があるようだから見に行こう、ではただの野次馬ではないか。リシアは呆れながら、そうか、と呟く。
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