本編

□大地と生きる村
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 丘を下る途中、年季の入った小屋を見つけた。恐らく、あれがカルスの言うアルバの家なのだろう。

「聖職者様の住んでる家とは思えないなぁ…」

 リシアが言う。とはいえ、あの古びて今にも崩れそうな木の家以外、特段建物は見当たらない。辺りは深緑が生き生きと生長する畑ばかりだ。

「誰もいないはずだよな?」

 シロガネは言う。リシアがそれに頷くと、シロガネはポツリと建つ建物に近づいていった。
 まさか勝手に入るつもりじゃないよな?とリシアが言うよりも先にシロガネは戸に手をかけ、そしてあろうことか開けた。その行動にリシアはどっと冷たい汗が吹き出た。

「シロガネ!少しは考え、て…」
「あら、シロガネちゃん?久しぶりね〜」

 扉の先には、頭に三角巾、手には箒をもったふくよかな中年女性がいた。

「あぁ、プラストさんか。久しぶり」
「え、知り合い?」
「前、アルムに来たときに、宿ないからって泊めてくれた人」

 シロガネは説明する。プラストと呼ばれた女性は、一戸しかない宿が部屋全部埋まってて、など、シロガネちゃん見かけによらず大食いでねぇ、など、聞きだしてもいないのに口からどんどん言葉が溢れ出た。

「えっと、その、ここはアルバっつー人が住んでいると聞いたんですが…」
「そうそう、プラストさん何でここにいるんだ?」

 リシアの言葉にシロガネは繋げて言う。

「あら、シロガネちゃんもあなたもアルバさんを知ってるの?いやぁ〜あの人も有名ねぇ〜!」
「は、はぁ…」

 質問とは全く違う回答に、リシアは戸惑った。マズい、一番面倒なタイプの人だ。
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