本編

□畏怖の神託者
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 捨てるにもくれた本人の前では気が引ける。
 手の中に置いておくには砂糖がとけてベタつくため、仕方なく再び口の中に入れ、手も使って棒を折りにいった。あまりの硬さにそれでも折れない。
 いっそと炎属性身体能力を上げ、噛む力を増大させる。

 それでようやく棒は二つに折れ、ついでに勢いで口内も噛む。
 激痛に小さな悲鳴を上げながらも、無心のまま噛む作業に入る。味は耐えるしかない。一瞬、スナック菓子のような味で美味しい、とい境地に陥った気もする。

 飲み込める大きさになったらすぐさま喉鳴らし、宿の受付に駆け寄ってそこにいた女性に水を貰えないかと懇願した。
 受付の女性は、こちらの様子を伺ってたのか、その事に何も言わず、コップを手に取りカウンター横にあった水樽から水をいれ、リシアに手渡した。

 お礼をいい、一気にそれをすべて口に含む。飲み込む際、勢いをつけすぎて気管支に入りそうな感覚がしたが、何とかそれは回避できたようだ。
 まだわずかに猛烈なソースと砂糖の味がするが、先程よりましだ。

 新たに入れてもらった水の入ったコップを手にロビーのソファーに戻ると、今度はアルバがシュガーソースに挑んでいた。しかもすでに噛み砕いている。
 その光景にリシアは唖然とするも、アルバは無心に対立する味を確める。そうしてしばらくして飲み込んだ。

「……水、いりますか…?」

 口のつけていたコップであることも忘れ、リシアはアルバに言う。

「私は大丈夫ですから」
「いやいやいや、あの変な味が大丈夫なわけないじゃないですか」
「あぁ…そう、ですよね」

 そういってアルバはコップを受けとると、少し飲んだだけでリシアに返した。

「やはり駄目か」
「むしろ平然と食べれるサダルフォンの方々の味覚を疑いました」

 ウィズ言葉に、リシアは水を飲みながら答えた。
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