本編
□晦冥の力
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しばらく馬車に揺られ、シロガネがまたも寝てる。
その様子を見ながらリシアはもうすぐ坑道を出るだろうか、と外の様子を見ようと立ち上がる。手綱を手に取るダリル、その先には馬。暗い坑道の道の先には更に。
リシアが、ダリル止まるように言う。ダリルはそれに驚くも、目の前に迫ってきたそれに気づき、馬を止める。この前とは異なり、急停止はしない。
それでも荷台は大きく揺れ、シロガネが頭を壁にぶつけた。
「いってぇな!!なんだってんだよ!!!」
「手伝え!魔物だ!!」
シロガネ襟を掴み、リシアは立ち上がらせる。アルバとウィズは、意味を察したようで、すぐに荷台から降りる。
「ダリルさんと馬車の保護は私が行います!すみませんが、よろしくお願いしますよ!」
アルバが言い、詠唱を唱えてそれを地面に叩きつける。
するとそれを中心に、白く輝く半球が現れる。一時的な防御壁だろう。リシアは剣を抜きながら馬車を飛び降り、向かってくる魔物を見る。
素早いが、目が追い付かない程ではない。
しかし、数が多い。大型の蜘蛛が四体、蝙蝠が五体。
それと、奥の方でゆらゆら揺れ動く木の幹のような何かがいる。遠すぎて、何かは分からないが。
「アルバさんたちがいてよかった…魔物なんて運が悪い時くらいしか出ないのに」
「それは…すみません」
ダリルの言葉にアルバが謝罪する。恐らく、自分の不運が招いたことだと思っているようだ。アルバを除き、リシアたちは光の半球を越えていく。
「俺は前線で誘導するから、シロガネとウィズさんは援護を頼む!」
「了承」
リシアの作戦に、ウィズはポケットから取り出した魔力石を左腕の機器に嵌め込みながら同意を表す。
シロガネはまだ半分寝ているのか、欠伸をしながら手を降るだけだ。
蜘蛛が一定の距離を詰めたところで、リシアは時を止めて駆け出す。攻撃直前でそれを解除し、下段斬りで蜘蛛を裂く。
急降下してきた蝙蝠にはもう一方の剣を振り落とし、斬るまでとはいかなかったが吹き飛ばす。
しかし、別の蜘蛛がリシアに襲いかかろうとする。それに気付くのがワンテンポ遅れた、と思いながらも後方に飛んで避ける。
だが、攻撃はくらうことはなく、キンッとした金属音と共に隆起した地面が蜘蛛を弾き飛ばす。
「追加!」
左腕に着けたら機器のキーを高速で叩きながら、ウィズは、小指を曲げる。
すると、隆起した地面に合わさるようにして土が凍りつき、そのまま蜘蛛も氷となる。その氷が砕け散ると、蜘蛛も同様にバラバラとなる。
ナイス、とリシア言うもその間に何かが横切り。しまった、と後ろを向く。蝙蝠が後衛を狙ったのだ。しかも、二体。