本編
□首に巻き付く強がり
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幸い、シロガネは体調を回復させ、馬車の荷台で一泊した後、リシアたちはアマダットの森の前で降ろしてもらった。
生長が早いとは聞いてはいたが、リシアが邪魔で切った草木や枝は元に戻っており、また剣を片手に道を作るはめになった。
朝早くで着いたため、日が暮れる前には抜けられるだろうとのことであった。最も、着いた当初は朝方独特のひんやりとした空気で包まれており、リシアは思わず寒さで震えたほどだ。
「寒いか」
「ウィズさん平気なんですか…?知り合いとか、サダルフォンの人、スッゴく寒さに弱い印象あるんですが」
ウィズは頷いた。その横でシロガネがくしゃみをした後で言った。
「砂漠地域とか、いっつも暑いってイメージだけどよ…夜はかなり冷えるからなぁ」
「そういうお前は自称旅人のクセに寒いのダメなのかよ」
「うるっせぇ!テメェもだろ!!……暑いのだったら全然平気なんだけどよぉ」
へぇ、とリシアは驚く。
「なんか、そっちの方意外なんだけど…お前肌白いし、見かけゼフェル出身だぞ」
「悪かったな。焼けないんだよ」
「暑くもなく寒くもなく…それが一番いいですよねぇ」
アルバが和やかに、腕を袖の中に入れながら言った。
狭い道入る際はリシアが先頭になったが、幅に余裕がある際はアルバが横で道案内する形となり、先に進む。
木々の先に、あの美しい泉を見た後で、あちこちに視線を移していたシロガネが言った。
「……この辺りにも、マバルアの魔力が来てる…?」
「……暴走の影響か?」
「いえ、極僅かですがアマダットの森にまで流れている、という話を聞きます。そのせいで、植物の生育速度は他の地域よりも早い…と」
アルバは答えた。リシアは疑問を口に出した。
「あれ…?前来たときは、それに気付いてたっけか?」
「いや…確かに極わずかでも度々目に入るんだよ。気付かない訳はない……と、思うんだけどなぁ」
シロガネは首を傾けながら言った。そうしてヘメラが南中から傾いた辺りでマバルアの森を抜け、楕円型の花弁が頬に当たって溶けた。
案内により予定よりも早く抜けられたことにアルバに感謝の言葉を言うも、アルバは難しい顔をする。
「量が多い……」
アルバがポツリと呟く。見れば、まだアルムも見えない距離にも関わらず、アルムにいた時と変わらない程の花弁が舞っている気がした。
足早にアルバが進む一方、シロガネはまた首をかしげる。
「チカチカしない…が、魔力の強さは変わってない……」
何があったんだ、と自分の足元を見ながら言う。自覚なしに、自分に何かの変化が訪れている。
理解出来ない変化に恐怖を感じ、シロガネは最後尾で冷や汗を流した。