本編

□首に巻き付く強がり
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 そうしてニクスの頭上にヘメラが輝く辺りで、アルムにたどり着いた。アルムに近付く度に宙に舞うマバルアの花弁の量が多くなり、アルムの入り口前では目の前がそれで埋め尽くされる程であった。

 リシアは、異様な不快感と疲労で一つ、息を吐く。それは他も同じようで、ウィズも口元を手で覆いながら大きく肩を上下させている。

魔力(ルナート)が人に害を及ぼすほど多くなるとか…そんな話、あんま聞かねぇんだけどなぁ」

 シロガネはそう言いながら左手でリシアの手をとり、詠唱を唱える。術を発動させると次にウィズの元へ行き、同様のことをする。
 先程の不快感と疲労は消えていることに気付くと、リシアはシロガネに感謝の言葉を言う。ウィズに術をかけ終えた後でシロガネが言う。

「俺の魔力(ルナート)使って対属性纏ってる状態だから、俺からかなり離れたり、より強いそれを当てられたら消失する。気を付けてくれよ」
「ちなみに属性は…?」

 シロガネは、険しい顔をしているが、何事もなく立つアルバを見ながら言う。

「グチャグチャだけど、マバルアのヤツはアルバの魔能周波数に近い。この防御はそれの対属性だ」

 といっても、とシロガネは付け加えて言う。

「マバルアの魔力(ルナート)には陰魔力(ニューナート)はほとんどないから、気を付ける術は光や癒だな」
「それって、アルバさんの術を受けたら…」
「この対属性の防御は消えるな。炎や音であれ、確実に」

 つまり、とアルバが背を向けながらいう。

「下手に私は近付かない方がいい、ということですかね」
「そんなやわな術にはしてねーよ。けどよ、テメェは何か心当たりがあるんじゃねーの。このマバルアの属性、明らかにテメェのだ」

 シロガネがそういうと、アルバは言う。

「…以前お話しした通り、マバルアの魔晶器は私が組み込んだものです。しかし、それは偶然にも手に入れた魔力石(セレークレスタ)を使ったものです」

 アルバはこちらを振り向く。笑みはなく、悲しそうな、困ったような表情だ。

「それが私に関わるというのも、よく分からないものです」
涙の信託者(オルクル)が魔晶器を作ると、その人と同じ周波数の魔力(ルナート)になるってこと…?」
「それはない」

 リシアの疑問に、ウィズは答える。

「魔晶器であれ、魔裂器であれ、依存する魔能周波数は内部の魔力石(セレークレスタ)。組み立てた異能者の影響は受けない」

 そうですよね、とリシアは頷く。疑問が疑問を生む中、マバルアの方へ足を進める。
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